「気づかない」と主張する被告に、裁判長が「気づかないはずがない」

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「ひき逃げしたという認識はなかった」と強固に主張し、一審でこの部分の責任を免れた交通事故加害者に対する控訴審の判決公判が8日、東京高裁で開かれた。裁判長は「クルマの損傷を考慮すると、気づかないはずがない」として一審判決を破棄。執行猶予付きの懲役刑に改めた。

問題の事故は2000年12月、神奈川県大和市内で発生した。22歳の男が乗用車を運転中、信号待ちをしていた47歳の女性(当時)が運転するクルマに追突したというもの。女性は事故によって全治2週間の軽傷を負ったが、クルマはそのまま現場から逃走した。警察で業務上過失致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで捜査を行った結果、被疑車両と破損部位の一致するクルマを発見。運転していた男を同容疑で逮捕した。

警察の取り調べに対し、この男は「事故の2日前からほとんど眠っておらず、事故発生当時のことはよく覚えていない」と供述。当て逃げしたまま現場から走り去ったことについても「そもそも事故が起きたという認識がない」と強固に主張した。一審の横浜地裁判決ではこの供述に信憑性があると評価。業務上過失致傷部分においてのみ責任を追及すべきだという判断から、男に対して禁固8カ月(執行猶予3年)の有罪判決を言い渡した。

しかし、これを不服とした検察側が控訴。事故を起こした後に男のクルマが右左折を3回繰り返し、約600メートル走ったことを「事故を認識して逃走していた」と主張。道交法違反の部分についても責任を追及すべきだと主張していた。

8日の判決公判で東京高裁の中川武隆裁判長は「クルマの破損状況などから考えれば、追突の際に生じた衝撃はかなり大きく、事故に気づかなかったという被告の主張には整合性がない」と指摘した。その上で「気づかないではなく、気づかないはずがないが正当だ」と認定。一審の判決を破棄し、道交法違反部分を含めた形で懲役10カ月(執行猶予3年)の有罪判決を言い渡した。

《石田真一》

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