【Winがクルマにやってきた】「消費電力を極限まで抑えろ」という至上命題

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マイクロソフトが『Windows CE for Automotive』を開発するにあたり、「一番神経を使ったのは消費電力の問題だった」と、ITS戦略統括部の平野部長は語る。クルマは大きなバッテリーを積んでいるが、実は電源管理という面ではPDA以上にシビアな省電力化を迫られたという。

クルマには巨大なバッテリーがあるので、電力面ではシビアにならずとも良いと考えがちだが、自動車メーカーからマイクロソフト側に真っ先に入ったリクエストは「エンジン停止状態での電流使用は一切認めない」という非常に厳しいものだった。

Windows CEを使った代表的製品にはポケットPC(PDA)があり、少ない電力で機器を動かすというのは経験があるようにも思えるものの、ポケットPCの場合には「電源を切った」状態でも、データをバックアップするためのDRAMには常に微弱な電流が流れており、実はレジューム(一時休止)に過ぎない。スイッチを入れると、電源を切る直前の作業環境がすばやく再現されるのは、システム的には「仮眠から起こした」状態だから。

ところが車載用端末では電源が完全にシャットダウンされることが要求される。なぜならば寒冷地などでのクルマのバッテリーあがりは場合によっては死を意味することすらある深刻なトラブル。エンジンが止まっているときに電流を使うことは許されない。しかも、起動時にはコールドスタートさせ、遅くとも2秒後にはアプリケーションを動かす必要がある。超スパルタンなリクエストだが、Windows CE AutomotiveではOS側でこの問題にもしっかりと対応させたという。

もうひとつは対環境問題。クルマの中の温度は極寒地でのマイナス30度から、真夏の炎天下のプラス80度まで条件次第で可変する。寒いからゆっくりと動いたり、暑いからといって熱暴走を起こしたりする車載機ではもちろん使い物にならない。OSには高度な自己診断システム「CPM(Critical Process Manager)」も搭載。ハード側でエラーが生じ、それがアプリケーション動作に影響を及ぼす際には、誤った情報を診断して自己訂正する機能を持っている。

「今のパソコンでは考えられないほど遅いペンティアム90〜166MHz相当のパワーで駆動するCPU、そして小さな画面サイズが相まって、動作時におけるバッテリー消費量も非常に小さい」と平野さんは説明する。意外な話ではあるが、同じ200MHzのCPUを車載端末とPDAに搭載したと仮定した場合、そのCPUのクロック数をリミットいっぱいまで使えるのはPDAで、車載端末は信頼性を保つためには例えば150Hz程度に頭打ちされてしまうという。CPUクロックがすでに2GHzを超えている最新型のデスクトップPCに慣れたメーカー側の開発担当者に「それで大丈夫なの?」と聞かれることも多いそうだが、「現状のカーナビであればCPUは上のリミットまでいかないと思います」と説明する日々だと清水さんは語っていた。

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《石田真一》

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