カロッツェリア『Air Navi』(エアーナビ)は、本体内にKDDI「CDMA2000 1x」準拠の通信モジュールを内蔵し、大容量メディアを使わないという点においては従来型のカーナビと一線を画す。全く違うものだけに、開発にかなりの時間を要したのだろうか?
パイオニアが通信型カーナビゲーションのケーススタディモデルを初公開したのは、昨年10月に幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2001」の会場だった。この際にはNTTドコモの携帯電話iモードと外部接続し、来場者に操作をさせない完全な展示モデルとして発表されている。ただし、この段階でも「情報は簡略化してあり、日本全図は90MB程度で足りる」と発表しており、今回発表されたAir Naviがこれの進化系であることは間違いない。
全く新しいタイプのナビだが、関係者の話によれば、Air Naviの心臓部(CPU、描画チップ)にはHDD方式の『サイバーナビ』と同じパーツを使っている。開発期間を短縮したり、開発費用を軽減するという目的もあるが、それ以上に重要だったことは、ダウンロードで要したタイムラグを感じさせないことだったという。
情報をダウンロードし、本体内で再構築するというプロセスをたどるため、どうしても若干のタイムラグが生じてしまうが、現時点で最も速い描画チップを採用したサイバーナビと同じ心臓部を採用したことで、このタイムラグを極限まで低減できた。サイバーナビでは精細な画像データを瞬時に表示するために高速化を要求されたが、通信ナビではタイムラグを消化するため、別の意味での高速化を要求されることとなったわけだ。
唯一違うのは液晶画面の裏に基幹部品を全て内包する必要があり、それに伴う極端な小型化を強いられたこと。設計チームが最も頭を悩ませたのはこの点で、ナビ用としてはハイパワーで発熱量も多いチップを効率良く冷やすことに苦心したという。本体下部の厚さは43ミリあるのだが、実はCPUを冷却するファンを収めるためで、この部分に限っては設計も「部品サイズ優先」で行われた。つまり「デザインを優先させてナビとしての性能を妥協したくなかった」(ITナビゲーション開発企画部企画課石動恭二氏)わけだ。筐体のスリム化は「次期製品で何とかしたいポイントのひとつ」(同石動氏)らしい。