兵庫県警は13日、駐車方法などを巡る交通トラブルから、山口組系の暴力団員から激しい暴行を受け、大学院生が殺害された事件に関連し、15日付けで行うはずだった人事異動を取り消したことを明らかにした。
異動が取り消されたのは、事件当日に県警の通信指令センターに課長補佐として勤務していた51歳の警部。本来であれば15日付けで警視に昇進し、尼崎西署の地域官として異動する予定だったが、今回の事故で警察の初動体制が問われていることもあり、当日の現場責任者を異動させることは事件の全容解明を困難にするとともに、市民からの猛反発を受けると判断。この人事を一時的に凍結させることとなった。
警察の発表によると、この警部は事件当日の夜、通信指令センターで宿直任務に就いていた。通常の110番通報については、応対した担当者が捜査員への指示を行うが、兵庫県警の規定では殺人、誘拐、ひき逃げ、銀行強盗、重大な暴力団犯罪などについては、最上位階級の責任者が判断し、緊急手配を行うことになっている。事件が起きた時間帯の責任者はこの警部で、通報内容を総合的に判断する義務があった。
今回の事件では、被害者を含めて4本の緊急通報が入電し、その全てが暴力団員の関与を示すものだった。これを暴力団が関わる犯罪と認定し、規定された広域捜査に切り替える必要があるのかを判断するのは指令センターに一任されているが、この警部が当日どのような判断を行ったのかが今後の重要な問題となる。
この事件では数々の警察の不手際が明らかにされており、捜査終結後には処分が行われる可能性が高い。現状では「今回の異動凍結に懲戒の意味はない」としているが、捜査の進展次第では「幻の警視昇進」となることもありそうだ。