●現行オーナーがパワーウインドウスイッチを探す
S インテリアについていうと、日本車的な「おもてなし装備」が充実したなあ、という印象が強かったですね。携帯電話と連動するカーナビとか、もう何でもついている感じ。
N 現行Cオーナーのボクが、パワーウィンドウのスイッチがどこにあるのか、探しちゃいましたよ。いまのSクラスから、メルセデスはスイッチの位置を変えたんですね。スイッチの形状も、それまでのシーソー式からトヨタ風の引っぱり式に変わっていました。これは違和感があるけど、新鮮でもある。
S 左右独立式のオートエアコンのスイッチもさがしてねえ。使い方は説明書を見ないと分からない。
N エアコンのスイッチは「わざと難しくしている」としか思えない(笑)。しかもその上にある、オーディオ類のスイッチも、これまた使い方がわかりにくい。
S 使いやすさで定評があった、ダイヤル式のエアコン・スイッチも今は昔という感じだったねえ。
F マニュアル操作のできる「ティップシフト」つき5速ATは操作性もいいし、レスポンスもいいんだけど、シフトレバーにブーツがついて、ゲートは見えなくなったのもどうかと思うな。PからRに、あるいはDからPに入れるときにメルセデス式のゲートが見えないのは不安を感じるよ。とくに夜とか。
S メーターパネルにポジション・インジケーターがついたからイイ、ということなんじゃないの。
N それにメルセデスの場合は乗っているうちに体が覚えるからいいんですよ。
●日本車式おもてなしにあふれる室内
F でも「インジケーターをつけた」というのは、メルセデス流「合理思想」からの「退化」でしょう。日本車化しているよ。
N 良くも悪くもSクラスから始まった「日本車式おもてなし」がこのCクラスにも満ちあふれていますね。これはやはり、日本というよりアメリカ市場対策なんでしょうね。アメリカ市場でレクサスが売れていて、対抗上そういった「おもてなし装備」がないわけにはいかなくなった。
F いや、問題は装備が増えたことよりも、設計の思想、デザイン思想が大きく変わったことにあるんじゃないか?
N 190から現行Cクラスにモデルチェンジした時は、大幅なコストダウンこそあったけれど、メルセデス流のインターフェイスは維持されています。新型Sクラスからですね、インタフェースの考え方が変わったのは。
S インターフェイスは確実に低下したよ。ちょっと前までのメルセデスはぱっと乗って、走行中にブラインド・タッチしても、どのスイッチが何かすぐわかった。そこにメルセデスの価値のひとつがあったはずなのに。これは「退化」だと思うな。
F 退化と言っていいのかなあ。
S 少なくとも、たくさん増えたファンクションが整理できていないよ。
F いや、問題は、ファンクションが増えたことよりも、スイッチ類などの操作系のデザインに「ごちゃごちゃ感」が高まっていることにあると思うな。「見た目の新しさ」を強く狙って意匠を変えている。
S そこが機能主義的じゃないから、俺はいやなんだ。意味のない変更だと思うよ。
F 「デザイン・コンセプトが変わった」といえばそうなんだけど、その目的が分からない。
S これはエクステリアにも言えることなんだけど、たとえば、すっぴんできれいな田舎の女の子が、ヘンに華やかな都会に憧れちゃって、下手な厚化粧をしているような感じがするな。
M でも俺は今回のインターフェイス変更を批判的には考えないな。メルセデスは、定評のあった従来の方法を、そのまま続けることもできたのに、あえて変えたんだから、それには訳があるはずだよ。表面的にとらえない方がいいと思う。
N さっきも言ったけど、とくにアメリカ市場ではレクサスの影響で、メルセデスであってもカーナビとか、さらにはインターネット機能みたいなアメニティ装備がついてないと売れない時代になったんですよ。そこで、そういったアメニティ装備を増やすにあたって、インターフェイスの方法論も別の体系を採用せざるを得なくなった、ということではないかしら。
S そうだとしても、あのインターフェイスの悪さは、いくら試行錯誤の初期段階だとはいえ、完全主義が売り物のメルセデスとしては考えられないほど完成度が低くないですか?
F メルセデスだったら、もっと「できる」はずだと思うよ。
●操作系は日本車のほうが優れている!?
M じゃあ訊くけど、そういう多様なアメニティ機能を使いやすく統合した、「いいインターフェイス」ができている自動車メーカーがどこかにあるの?
S トヨタを筆頭とする日本車メーカーでしょう。
F じっさいBMW3シリーズの純正カーナビなんか最悪だよ。行きたい方向にダイヤルを回してから、ボタンを押さないと作動しないんだ。日本製みたいに行きたい方向にスティックを倒す仕組みにすればいいのに。
M そうか、日本車メーカーは10年前のバブルの頃にハイテク何でもござれのゴテゴテ時代があったけど、その頃批判もされたし、メーカー自らも勉強もして、いまや世界中のメーカーの課題である「アメニティ装備のインターフェイス」で世界最高レベルに来たんだね。
F ただ、日本メーカーが得意なインターフェイスというのは、あくまでもバーチャルな、コンピューター的な世界でのインタフェースが優れているだけなんだ。「走り、曲がり、止まる」といったリアルな世界でのインターフェイスは、メルセデスはやっぱりすごいよ。