S 『Tipo』12月号の表紙キャッチは「アンチ・スペック派でいこう!!」とのことで、トヨタMR-Sとライバルの比較、同セリカとライバル比較などをやっています。
T MR-Sが出たということで、ハイパワーなスポーツカーではなく、オープンエアだったり、ドライブ・フィールが気持ち良いクルマを見直そう、ということみたいです。
F それにしても、MR-Sの比較テストに、マツダ・ロードスターはわかるにしても、なんでフィアットX1/9なの? バルケッタやMGFも、まあわかるけど、旬のクルマじゃないでしょ。こういう比較のセンスは理解できないなあ。
M でも量産車ベースの軽量オープン・ミドシップというMR-Sの成り立ちを理解するという意味では、X1/9が出てきても正しいと思うけど。
S 元オーナーとしては、X1/9の取材車は日本一程度のいい個体だということを知っているわけで、まあ写真を見るだけでもうれしいけど(笑)
F まあそうだとしても、X1/9をどのくらいの人が知っているの? だいたい、ほとんど売ってない車でしょ。
T でも、この選びが『Tipo』らしいところですよ。
F 僕はその『Tipo』らしさがなじめないんだ。なんか体育会系の部活の同人誌って感じがして。『Tipo』って、人生のかなりの部分をクルマが占めている人が読む本だよね。趣味を同じくする友人との口プロレスの素材を探すためというか。
T でも一応、MR-Sとセリカという旬のクルマを取り上げて、時事性を出していますよ。
M そのセリカの比較テストも、クルマのチョイスが『Tipo』らしいね。「ベスト・ハンドリング・マシンはどれだ」ということで、ルーテシア16Vやプジョー206、アルファ145と比べている。シルビアとかインテグラ・タイプRではなくて。
S でも「ベスト・ハンドリングカーを探せ」って、なんかイギリスの自動車雑誌の真似っぽいね。
M さらにアルファ166の記事では、156と164Q4を並べて比べているというのも特殊だね。僕には理解できない。
F でも実際の読者はこういう迷いかたをするんだよ。中古はかならず必要。
M そうかなあ。僕は156を買ったときに155や75とは迷わなかったけど。
F 三浦さんは「いいクルマを買おう」と思って156を買ったけど、『Tipo』の読者はアルフィスタだから、こういう選びで迷うんですよ。『Tipo』って、編集者が「クルマ乗りたい病」になって企画立ててる気がするな。とくにエリーゼの記事なんか。
S 「クルマ乗りたい病」で作られてる雑誌ってパワーがありますよ。エンターテイメントとしては読者も楽しめるし。
F そういう意味では僕もけっこう読んじゃう。なんだかんだ言っても読んでしまうんだな。くやしいけど。ただ最近はラテン化が進んで、ドイツ車があまりでてこないのが寂しい。
M 太田哲也選手のGT選手権の事故リポートをしっかりやっているのは編集者の意志が感じられる。徹底してる。ちゃんと表紙でもうたっているし。
S 太田選手の回復ぶりが伝わるエッセイも感動的ですね。
F それにしても、この98年5月のGT選手権での事故事件を別として『Tipo』はあまり批判的なことは書かないね。
M 好きなクルマに関しては「あばたもエクボ」状態になってしまっているんじゃない?
S よくも悪くも、アマチュアリズム精神に基づいた雑誌なんでしょう。
F でも『Tipo』にはショップの広告がたくさん入っているでしょ。ボクもいやな経験がたくさんあるのだけれども、ティーポ的なクルマを買って維持するうえではそういうショップと、一般のお客さんとの関係においては、トラブルがけっこういろいろあるはず。なのに、そういうところには触れないで、「エンスー生活の楽しさ」ばっかり強調してるのは問題なんじゃないかな。
M その苦しみまで、彼らは嬉しそうに報告しているから(笑)
F そのへんがやっぱり部活なんだね。
S あと、『Tipo』はもうすこし日本語と英語の使い方をなんとかしてほしいですね。読んでいると頭が痛くなる(笑)。
T それでも、一般人にもわかるレベルに抑えて、しかもぐいぐい読ませる記事になっているというあたりは実力なんですね。
M なお、ティーポの出版元、ネコ・パブリッシングでは広告営業、総務部総合受付担当の社員、および広告、営業部のアルバイトを募集しているそうです。興味のある方は応募してみてはいかがでしょう。念のため、ティーポの編集は(株)エディトリアル・クリッパーという編集プロダクション会社です。注意してください。
座談会メンバー
S:陶山 拓(まとめ)
M:三浦和也(auto-ASCII24)
T:高木 啓(auto-ASCII24)
F:藤田耕治(auto-ASCII24)