都市コミューターとして開発が進められていた超小型電気自動車『ハイパーミニ』は、2年前の東京モーターショーにプロトタイプが出展され、今回は量産仕様として展示された。D(デザイン)視点から見ると細部がリファインされたほか、プロトタイプと比べてホイールベースが10cm伸びている。 プロタイプのインテリアはダッシュボードにコンピューター(キーボード&ディスプレイ)が組み込まれていたが、量産型ではやはり実現しなかった。ショーカーが量産化されるとデザインがつまらなくなる例はとくにインテリアで多いが、ハイパーミニではプロトタイプのイメージは比較的保たれているほうだ。
ハイパーミニを見るといわゆる“マイクロカー・デザインの方程式” が見えてくる。 1. 下半身をしっかり見せること。全長にたいし全高の高いマイクロカーはトップヘビーに見えがちだ。ハイパーミニはタイアの存在感を主張している。プロトタイプのフェンダーは指で押すとへこみそうだったが、量産仕様ではデザインが熟成されている。スズキのPu3、トヨタのe-comも同様の手法。ダイハツのミクロス-3ℓはボディ全体を上下2分割し、下半身の方が厚みを見せている。 2. 乗員の“包まれ感”(安心感)を確保すること。ハイパーミニがサイド・ウィンドウのグラフィックスをウェッジシェイプにしたのはこのため。ミクロス-3ℓもウェッジシェイプだ。ハイパーミニのようにドアフレームを通常の乗用車と比べて太く見せるのも有効。いっぽうPu-3ではドアにキャラクターラインを入れて剛性感を与えている。 3. マイクロカーはシティカーとして使われることが多いので、視界、見切りを向上する。ウェッジシェイプのサイドウィンドウは前方斜め下の視界を拡大する。Pu3とe-comではフロントフェンダーを盛り上げている。 4. 小さいクルマは周囲に見られること(被視認性)も大事。ハイパーミニのプロトタイプでは灯火類は大きく、上の方に配置されていた。量産仕様では法規に適合するように変更されたが、オリジナルのデザインテイストは維持されている。リアコンビもCピラーからルーフにかけての高い位置に配置されている。ミクロス-3ℓ、e-comもCピラーにリア・コンピランプを配している。
軽自動車枠の拡大については各社なりの思惑があったが、もちろん実際にはいずれも軽枠以下のマイクロカーの開発を進めていたわけだ。それともう1点、MCCスマートが(自身の見込みほどではないにせよ)意外と売れているということが、マイクロカー開発陣を勇気づけたようだ。 |