東京都が管理する道路、都道。都道11号という若いナンバーなので幹線道路を想像するが、世田谷区内で車幅制限1.5mという規制標識が立てられている。実は古い道で、早くに沿線の市街地化が進み、拡幅できないまま別の経由地で新道が開通した、という状況のようだ。
最大幅を規制する標識は狭い道幅を警告するものではなく、通行できる車両の幅を規制するものだ。詳細は省くが、全幅3.5mの道路が一方通行の場合には車道の幅は2.5mとなり、車両法で定められた車両の最大幅となるので、標識は不要だ。これが対面通行になると通行できる車両の最大幅は1.5mとなり、標識が必要だ。幅3.5mの道で対面通行になる例は少ないので、標識も数が少ない。
東京の世田谷区は狭い路地が多いとの評判だ。2021年に行なわれた「世田谷区土地利用現況調査」では、幅員4m未満の道路延長の割合が総延長の31.9%となっている。世田谷区の名誉のために断っておくと、統合された資料が見つからないので断片的な比較になるものの、近隣の自治体と比べてそんなに悪い数字ではない。例えば、調査時期は不明だが、隣の杉並区の区道で幅員4m未満は総延長の30%という資料がある。
同じく隣の狛江市にも狭い道は多く、そのひとつが最大幅1.5m規制の狛江市道535号線だ。変形五叉路になっている二の橋交差点から、幹線の都道3号・世田谷通りと別れて西南西方向、岩戸南3丁目内部に分岐するのが狛江市道535号線だ。分岐して20mほどの地点に規制標識が立つ。この時点でエスケープルートはないので、交差点に立ててほしい。

区道はまもなく都道11号になって世田谷区に入り、喜多見5丁目にある知行院の山門前まで、約1.2kmにわたって幅3.6~4.0mの狭隘区間が続く。最大幅1.5mの規制標識は数カ所に立てられ、支柱に東京都のシンボルマークが掲示されているので都道だとわかる。
南側を喜多見4丁目、北側を喜多見7丁目に挟まれたこの付近は、今では交通量の少ない生活道路だが、かつては多摩川左岸を往来する道筋だった。特に明治期までは、青梅地区の材木を筏に組んで多摩川を流した筏乗りが、帰りは陸路をたどったその道筋だったことから、筏道とも呼ばれる。重要な道だったので都道にも選定されたのだろう。
世田谷区内の都道11号はおおむね筏道をトレースし、喜多見5丁目から東側は多摩堤通りとして整備されている。いっぽう西側の喜多見5丁目から狛江市南東部にかけてのエリアで3本に分岐し、しかも狛江市北東部の都道11号・狛江通りとはつながっていない。都道11号のうち、北側の成城通りに接続する区間は1950年ごろまでに、南側の水道道路は1960年代に、それぞれ整備された。残りの1本が昔からの筏道で、レア標識の最大幅規制が林立する。
車幅制限1.5mという規制では、現状、通れる車はない。例えば、軽自動車のホンダ『N-BOX』でもサイドミラーを倒した全幅が1655mm、立てると1825mmになる。実際には、最も狭いところでも幅3.5mはある道なので、すれ違いに気をつければ、3ナンバー車でも通れないことはない。
狭い道! 制限1.7mでコンクリートブロック付き、道幅は5mあるけど?…東京都板橋区
https://response.jp/article/2025/08/17/399672.html