「ホンダの子会社になって、日産のポテンシャルを引き出せるのか、確信を持てなかった」。日産自動車の内田誠社長はそう語った。日産と本田技研工業(ホンダ)は2月13日、経営統合に関する協議・検討を終了すると発表した。日産とホンダは同日、それぞれ記者会見を行なった。
●変化の加速する業界で競争力を保つための経営統合
日産とホンダは2024年12月23日に、両社の経営統合に向けた検討に関する基本合意書締結していた。自動車業界を取り巻く環境は日々変化し、技術革新のスピードも加速している。そのような環境下で競争力を保ち続けるための選択肢として、両社は経営統合に向けた協議・検討を開始した。
両社は基本合意書の締結以降、代表執行役社長を含む両社の経営陣が、取り巻く市場環境や経営統合の目的、統合後の経営戦略・体制などについて議論、検討を行なってきた。ホンダの三部敏宏社長は「統合で期待できる成果が大きいことがわかった。しかし、痛みを伴う経営判断をスピーディに行なうことが必要だった」と語る。
経営統合のあり方は、基本合意書において、共同持株会社を設立して両社をその完全子会社とする体制を前提としていた。両社の協議の過程で、株式交換によりホンダを親会社、日産を子会社とする体制へ変更することをホンダから提案するなど、あらゆる選択肢について検討を重ねてきたという。
●ホンダが日産に子会社化を提案
日産子会社化の提案があったことは、今回の発表で公表された。提案の理由についてホンダの三部社長は「持ち株会社の下の子会社という構成では、厳しい判断が迫られる局面において、持ち株会社のボードでの議論に時間がかかり、判断のスピードが鈍る。株式交換による経営統合で、『ワンガバナンス』体制の早期確立をめざした」と説明する。ワンガバナンスによる意思決定の迅速化を最優先したわけだ。
さらに三部社長は「株式交換は日産にとってきびしい判断であることは想定していた。しかしそれ以上に恐れることは、統合が進まずより深刻な状況になること。子会社化の提案はホンダの覚悟の表れだった」と言う。
しかし日産側は、内田社長の表現によれば「当初の枠組みと異なる提案があった」ことに警戒感を抱いた。内田社長は、「統合の目的は、力を合わせてグローバル競争に打ち勝つ企業体になること。その中で完全子会社になった場合、日産の実勢は守られるのか。確信を持つに至らなかった」と述べ、日産の自主性が損なわれることを恐れた。