自動運転の分野では、テスラやWaymo(ウェイモ)、百度(バイドゥ)など米中企業の活躍がグローバルにおいて目立つ。そんな中で独自の地位を築きつつある日本のスタートアップ企業が「ティアフォー(TIER IV)」だ。
自動車業界には馴染みがないIT企業的なオープンソース戦略とWeb技術が同社の自動運転開発をどのように支えているのか。同社の新CTO、髙島芳仁氏の講演を取材した。

新CTOのバックグラウンドはWebエンジニア
髙島氏の元々のバックグラウンドは、Webサービスのバックエンド開発だ。その前はMicrosoftでWindowsのOS開発に従事していたという自動車関連企業としては異色の経歴だ。
ペンシルバニア大学でコンピュータサイエンスと数学のダブルメジャーを取得後、2006年にMicrosoftに入社。Windows PhoneなどOS開発を経て、Skype for BusinessやOffice関連のWebのバックエンド開発を手がけた。2019年からはAmazonでゲームストリーミングサービス「Amazon Luna」の開発に携わった。
この北米の企業で身につけた大規模エンジニアリングやマネジメント、グローバルな仕事のアプローチを、日本発の企業の成長に活かしたいという思いがあったという。

その中で出会ったのがティアフォーだった。日本発では珍しく、海外でも認知されているテック・スタートアップで、複数の有名企業からの投資も得ており、グローバル市場で戦える実力を備えていると感じたという。
また、自動運転という新しい分野に挑戦することで、少子化やドライバー不足といった日本の社会課題の解決にも貢献できるとも考えた。
オープンソースをベースとした開発戦略
同社の基本戦略は、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」をベースにしたプラットフォーム展開だ。「Linuxに例えるなら、AutowareがOSで、当社のPilot.AutoはRed Hat Linuxのようなものです」と髙島氏は説明する。オープンソースのAutowareに、実用化に必要な機能とサポートを追加することで、企業のニーズに応える。

Pilot.Autoでは、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアのリファレンスデザインも提供している。多彩なユースケースに対応すべく、Delivery Robot(ラストマイルデリバリーの配送ロボット)、Cargo Tranport(ゴルフカート型の構内輸送車)、Shuttle Bus(シャトルバス)、Robo Tax(ロボタクシー)、Personal Car(乗用車)の5つを現在用意している。
自動運転MaaSを運用したい企業や自治体が顧客となって、最適なリファレンスデザインを選んで走る環境に合わせてカスタマイズや味付けをする。顧客のニーズを満たす自動運転システムの開発コストを削減し、市場投入までの基幹を短縮できるというのが、ティアフォーが提供しているソリューションだ。


自動運転の開発・運用を支えるWeb技術
Web.Autoは開発支援、運行支援、インフラの3つの領域でサービスを提供している。AWSをクラウド基盤として採用している。開発支援ツールとしては、シミュレーターなどを使った様々なシナリオテストの大量並列実行できるCI/CD Pipelineや、データ基盤に集められた実験データを元にML(機械学習)のトレーニングを行うMLOps Pipelineなどがある。