ジェイテクトの近藤禎人社長は6月26日、記者会見を開催し、今後の取り組みなどについて説明した。近藤社長は前日の定時株主総会を経て社長に就任したばかりで、トヨタ自動車で約35年間、生産技術に携わってきた。
◆トヨタ出身の近藤社長、ジェイテクトとの関係は長い
「トヨタに入社したときからずっとジェイテクトと一緒に仕事をしてきた。設備を開発したり、歯切り盤を開発したり、リチウムイオンの電池設備を一緒につくった。年代ごとに工作機械や生産準備などを行ってきた。ゆかりの深いジェイテクトで改めて社長を拝命したということは本当に嬉しい。これまでの経験を活かしながらジェイテクトをしっかり経営していきたいと思う」
こう話す近藤社長は1988年3月、大阪府立大学機械工学科大学院を修了後、トヨタ自動車に入社。配属は第1生産技術部でデフ(差動歯車装置)の生産技術に携わった。その後、北米での4速ATの立ち上げプロジェクトをはじめ、ハイブリッドのトランスアクスルの生産準備、燃料電池の生産技術に携わった。2020年4月にモノづくり開発センターのセンター長に就任し、24年1月からジェイテクト顧問を務めた。
◆勝ち筋はデジタルの活用
そんな近藤社長がまず進めようと考えているのがデジタル化、いわゆるDXの推進だ。「やはり日本においての勝ち筋はデジタルを上手く活用していくことが非常に重要だと思う。弊社はまだまだデジタル化が遅れており、今年は“デジタル祭り”と言って盛り上げようと考えている。まずはデジタルの底上げを進め、デジタルでものをつくっていくことをプラットフォームにして、効率的な体制をつくっていきたい」と説明する。
ジェイテクトの2024年3月期の業績は、売上収益が1兆8915億円(前期比12.7%増)、事業利益729億円(同16.3%増)、当期純利益402億円(同17.4%増)と2ケタの増収増益を達成。2020年3月期には最終赤字に転落したが、そこから見事に業績を立て直した。ただ、営業利益率は3.8%と18年3月期の5.6%を上回ることができていない。まだまだ改善する点が多いということだ。
それをデジタル化を進めることによって、収益力をさらにアップさせようというわけだ。同時にデジタル化によって、余力をつくっていこうと近藤社長は考えている。そしてその余力を“次の道の発明”に結びつける。
◆トヨタグループで役割分担
「ジェイテクトだからこそできる新たな価値を提案し、未来のモビリティ社会に貢献するため、新しい道を作っていきたい」と近藤社長は強調する。とは言うものの、ジェイテクト1社だけではこれからの電動化やSDVに対応するのは難しい面もある。