パナソニックエナジー、車載電池の戦略を修正し、売上高3兆円目標も先送り

パナソニックエナジーの只信一生CEO
  • パナソニックエナジーの只信一生CEO
  • 円筒形車載電池:左から1865、2170、4680
  • 住之江 生産プロセス開発棟
  • 和歌山工場

パナソニックホールディングス(HD)傘下で車載電池などを手がけるパナソニックエナジーは6月6日、中長期戦略を修正し、2030年度に売上高3兆円超としていた目標を見直し、達成時期を未定と先送りをした。


昨年の今頃は2030年度に生産能力200GWh、電池事業の売上高3兆円超、そしてネバダ、カンザスに続く第3の工場を建設していくなどと鼻息も荒かったが、この1年で様相が大きく変わってしまったようだ。

◆テスラの販売減など北米で減速

同社が主力としている米国のバッテリーEV市場は減速し、納入先のテスラの販売台数も大きく減少。この24年1~3月の販売台数を見ても、前年同期よりも9%も減った。その影響を受け、パナソニックエナジーの23年度の業績は売上高が9159億円と期初公表値より11%も少なくなってしまった。調整後営業利益についても404億円減の946億円だった。

しかも、その調整後営業利益は米国IRA補助金の増益分868億円を含んだ数字で、それを除くと車載電池事業は赤字だった。「北米における日本産品の価格競争力がIRA導入後に急速に低下し、国内工場の需要が急減、生産調整を行ったため、収益は大きく悪化してしまった。また、安全性に問題ないものの、過去の製造品から一部不具合が発生した」とパナソニックエナジーの只信一生CEOは説明する。

◆26年度までは厳しい状況

いずれにしても26年度までは厳しい状況が続く見通しだ。さらに、米国コンサルティング会社の試算によると、30年時点の北米のバッテリーEV化率の見通しがこの1年で50%から30%に引き下げられた。その結果、30年度の計画を見直さざるを得なくなったわけだ。

「売上高3兆円超を目指すことには変わらない。投資計画についても、27年度までは変更がない。28度以降は市場環境を見ながら柔軟に実施していく」と只信CEOは話し、30年度での達成は難しいとの見解を示した。また、北米の第3工場についても「検討はしているが、公表できることは何もない」と、昨年から後退した感じだ。

◆「日・米2軸」に転換、収益基盤を強化

そこで、車載電池に関して戦略を変えることにした。これまでの「北米1軸」から「日・米2軸」へ転換し、収益基盤を強化する。国内では、まず住之江工場(大阪市)で人員のシフトや原価改善、和歌山工場での新型電池「4680」の量産で収益性の改善を図る。


《山田清志》

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