流行のカーフィルムはADASに影響しないの?…スペシャリストが検証した

最近流行りのカーフィルムはADASに影響しないの?…電子制御装置整備のスペシャリスト集団が検証を実施
  • 最近流行りのカーフィルムはADASに影響しないの?…電子制御装置整備のスペシャリスト集団が検証を実施
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今年もGWが終わりいよいよ暑い夏へのカウントダウンが始まる季節になってきた。今年の夏は、1月13日に国土交通省 自動車局整備課から各地方運輸局および沖縄総合事務局に向けて、指定自動車整備事業における着色フィルム装着車の指導内容に関する通知が行われたことを受け、昨年にも増してフロントガラスへのフィルム貼付が活発化することが予想される。確かに道路運送車両法の第三章 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第117条第4項第6号の観点からは、測定時に70%の可視光線透過率を保っていれば保安基準に適合しているので何ら問題ないと言える。

一方で、フロントガラスへのフィルム施工に関して電子制御装置整備の観点から見たときには、カメラの前にフィルムを貼付することでシステムの作動やエーミング作業に影響はないのだろうか? という疑問が頭をよぎる。先般(2023年3月)、カーケアプラスで記事「汚れでADASエラーが検出…フロントガラスの内側のクリーニングでも電子制御装置整備が必要に」を掲載した通り、ADASの作動に関わるカメラやセンサーなどの電子制御装置は非常に繊細であることが分かっている。今回、偶然にも千葉県浦安市の株式会社車検・鈑金デポが同様な疑問を抱き“フィルムの貼付はカメラに影響を及ぼすか”の検証を行うという情報を入手したので、取材の申し入れを行い検証に同席させて頂いた。

電子制御装置整備のプロフェッショナル集団が検証を実施

今回の検証に使用された車両は「トヨタ プリウス(60系)」だ。この車両にはトヨタ自動車の最新の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(GSP3搭載)」が採用されており、フロントガラス上部に付属されている単眼カメラとフロントグリル部に付属されているミリ波レーダーによって、衝突被害軽減ブレーキ(プリクラッシュセーフティ)やACC(レーダークルーズコントロール)などの機能が制御されている。

今回の検証は、フロントガラス上部に付属されている単眼カメラの前に、

① フロントガラス保護を目的としたウィンドウプロテクションフィルム(WPF)

② ドレスアップや紫外線(UV)カットを目的としたウィンドウフィルム

をそれぞれ貼付した際にカメラに影響はないのかどうか調査を行った。なお、ドレスアップや紫外線(UV)カットを目的としたウィンドウフィルムに関しては、車室の内側からカメラやガラスを外してガラスの内側に貼付することが一般的ではあるが、電子制御装置整備対象車で前述の作業を行うには電子制御装置整備の認証が必要であり、一般的なカーフィルム施工業者では作業を行うことができないため、今回は外側に貼付する方法で実施された。(注. 株式会社車検・鈑金デポは電子制御装置整備の認証を取得しております)

調査方法は以下の通りだ。


1. まずは何も貼らずに通常の状態で走行エーミング(注.クルマを走らせながら道路の白線や周囲の景色を認識させることでカメラの校正を行う手法)を実施。この時に掛かるエーミング完了時間も測定

2. 前方認識カメラ軸ずれ量の確認(注.正しい位置にターゲットを設置することで、カメラが認識している正面と車両の正面にズレがないかの確認)

3. ターゲットを設置し静的エーミング(注.正しい位置に設置したターゲットを認識させることでカメラにクルマの正面を認識させる手法)で校正、基準を「0°」に

4. フィルムを貼付し、同じ条件下で前方認識カメラ軸ずれ量を確認

5. フィルムを貼付したままの状態で走行エーミングを実施(エーミング完了時間も測定)

6. フィルムを剥がして再度前方認識カメラ軸ずれ量の確認


そして気になる結果はそれぞれ以下の通りである。

結果としては“エーミングは完了するが影響はゼロではなかった”といったところだろう。特に厚みのあるプロテクションフィルムは影響が顕著である。この結果をどう受け止めるかは各事業者次第であるが、やはりズレが発生する以上フィルムを貼付した際には再度エーミング(動的ではなく静的)を行うことが望ましいのではないだろうか。

今回、検証を行った株式会社車検・鈑金デポの上松社長は、「弊社は事業者としての側面だけではなく株式会社オートバックスセブンの子会社として全国のオートバックスに対する検証機関としての側面も持っています。今回の検証結果をオートバックスセブンにフィードバックすることで、グループ全体に対してフィルム貼付に対する見解を出すことができます。またそれが、自動車アフターマーケット全体にとっての貢献にも繋がるのではと考えています」と、今回の目的を教えてくれた。

今回の検証が、自動車の安全性向上に繋がることを期待したい。そのためにはイチ事業者の努力だけでなく、業界全体で取り組む必要性があるのではないだろうか。


【追記(2023.6.3)】

今回の検証は、あくまでも私企業がADASに関する自社の知見を広げるために行ったものであり、使用したフィルムの性能を評価するものではないことを理解いただきたい。例えば、フィルム貼付の施工方法などによっては異なる結果となる可能性もある。

本記事で伝えたいのは、法的には合法であったとしてもADASに影響を及ぼす可能性があるのなら、自動車の安全性能維持のために、“ADASに影響がないことの確認”あるいは“影響が及んでいればその校正作業を行うこと”が望ましいのではないだろうかという問題提起である。

《カーケアプラス編集部@市川直哉》

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