3月24日にレスポンス オンラインセミナー「グローバルEVトレンドと車載LiBリサイクル&リユース・各社の最新動向」が開催された。車載バッテリーのリサイクルとリユースに関する世界の動向を中心に、EVとバッテリーに関する市場傾向などについて、沖為工作室合同会社 ファウンダー CEOの沖本真也氏が解説した。その内容をダイジェストでお届けする。
グローバルEVトレンド
Software-Defined Vehicle
ソフトウェアで管理できるクルマの開発が、世界的なトレンドのひとつになっている。車載センサーで車両周辺のデータを収集し、危険の検知や事故防止に役立てるのが主な目的だ。企業側は、収集したデータを事業活動に生かすことも目指しているという。例えば車載バッテリーも含め、クルマのライフサイクルを通じた管理やメンテナンスに活用することで、新しいビジネスチャンスの創出が可能になる。
そこに至るまでにはハードルもある。膨大なデータを、遅延なく安全に処理するプロセッサーやシステムが必要になる。自動車関連業界では、そうしたソフトウェアを開発できる人材が不足しているという。また、クルマの複雑化によって、トラブルが生じた際の原因特定が困難になる場面も増えるだろう。
課題はあるが、新しいユーザーエクスペリエンスの提供にもつながる「ソフトウェア定義のクルマ」は、間違いなく開発が進んでいくだろう。EV搭載バッテリーのリサイクルやリユースも、このようなシステムとデータベースで管理していくスタイルが模索されているという。
エネルギーマネージメントと電動化
従来のバッテリーマネージメントシステム(BMS)は、電圧・電流・温度などをモニターし、過電流や過電圧からバッテリーを保護することが主な役割だった。現在では、エネルギーを効率よく管理するための“スマート”なBMSが求められている。バッテリーの状態をリアルタイムで診断し、その時点で発生するリスクのある劣化メカニズムなどを特定。必要な調整を能動的に行い、バッテリー動作の最適化を行うシステムが必要とされているという。
ライフサイクルマネジメントと情報管理システム
最近では、自動車会社が顧客情報などをデータベースで管理している。顧客に対し様々なサービスを継続的に提供することで、収益を上げるためだ。中国では、EVなどの「新エネルギー車(NEV)」の場合、国が管理する(データ)プラットフォームにも登録される。政府がEVの動向などに関するモニタリングとデータ統括を行い、企業がバッテリーのメンテナンスを含めたクルマのライフサイクルマネジメントを行っているのが中国だという。
今後は効率的なリサイクルやリユースのためにも、デジタルプラットフォーム上でのEVやバッテリー管理が主流になっていくと沖本氏は言う。ただ、欧州などの地域では個人情報の扱いに関して中国とは事情が異なる。そうした国々で、データ管理がどの様に運用されるのかは注視していく必要がある。
アメリカの動向:インフレ抑制法のEV税額控除
アメリカでは昨年、EVに関連する大きな動きがあった。「インフレ抑制法」の中に、EVの新車購入時に受けられる税額控除要件が定められた。車種や価格、ユーザーの収入などで異なるが、税金の控除が受けられる場合がある。
適応となるEVには条件がある。リチウムやコバルトなどバッテリーに使用するレアメタルは、米国内またはFTA加盟国から調達する必要がある。バッテリー部品は、ロシアや中国など「懸念される外国の事業体」で造られたものであってはならない。さらに車両の最終組み立てや、バッテリー製造は北米で行うことが条件となる。一方、今すぐの実現が困難な項目もあり、それらについては段階的割合要件を定めている。

これらはあくまで税額控除を受けるための要件であり、アメリカ政府は「外国企業の全面的な排除ではない」としている。いずれにしても、この法律がカナダやアメリカにバッテリー製造やリサイクルの工場を建設する加速因子となっているとのことだ。