インドのEVは100万台? 2022年インド乗用車販売ランキングを詳しく解説【ベンガルール通信その25】

そんな、ばなな…
  • そんな、ばなな…
  • スズキ アルト K10
  • マルチ・スズキ(デリーモーターショー2023)
  • ヒョンデの小型SUV ヴェニュー(参考画像)
  • タタ ティアゴEV
  • タタ ネクソン

南インドに拠点を置いて「イノベーションの実験室」を運営して日本とインドのビジネスの架け橋となっている大和倫之氏による「ベンガルール通信」。

今回は2022年のインド国内自動車販売実績を元に各市場プレイヤーの強みと弱みを解説する。インド国内勢に加えて日本、韓国、欧州の各メーカーが入り乱れ、EV化も急速に進行するインドの自動車市場の「今」はどうなっているのか?

過去最高だった2022年のインド自動車販売

南インドより、ナマスカーラ!

2023年1月を迎え、各メーカーの2022年の販売実績が報じられている。殊にPV (Passenger Vehicles, 乗用車)の市場は前年比24%成長。過去最高だった2018年の334万台からも14%増となる380万台という絶好調となった。

背景にはSUV人気があると言われ、本年も引き続き強力な成長基調が維持される見込みというが、PVメーカー16社それぞれの勢いには多少の違いがありそうだ。

第1位:Maruti Suzuki シェア1位も成長は鈍化?

スズキ アルト K10

変わらずインド自動車市場で圧倒的な首位、42%のシェアを握るのはMaruti Suzuki(マルチスズキ)。前年比15%増となる157.6万台を販売し、年末時点で更に3か月分に相当する37.5万台分のバックオーダーを抱えていると報じられる。

ただ、日本市場の感覚からはイメージしづらい15%の成長を遂げたとはいえ、市場はそれを遥かに上回る24%成長だからシェア減は免れない。2021年の45%から3%を失う結果となり、かつては優に過半を上回っていた市場シェアの縮退が一層、進んでしまった。

セグメント別の販売状況をみれば、他が全て成長している中で『アルト』に代表されるエントリーセグメントが減少しているのが目立つ。昨年の23万台強から4000台、2%弱の減少だが、これは脱コンパクト・上級移行に向けた市場変化の現れなのか、それとも何らか意図的な施策・戦略的判断に基づくものなのか。

2位:Hyundai Motor India 25年を通して最高値だが…

ヒョンデの小型SUV ヴェニュー(参考画像)

続く2位のHyundai Motor India(ヒョンデ)は市場シェア15%。年間販売台数55万台は前年比9%増、1998年9月の創業以来、25年を通じて最高値を記録したというが、マルチスズキ同様、市場の成長に対しては明確に遅れを取っている。結果として2%ほどシェアを失った計算になる。

同社はSUV5車種、ハッチバック2車種、セダン2車種の計9車種のラインナップを揃えるが、中型SUVと小型SUVの2車種が同社販売台数の約半数を担っており、これらのヒット車種がシェアの落ち込みを辛うじて支えているように見える。

第3位:Tata Motors EVで大躍進

タタ ネクソン

2022年に最も健闘したと言えるのがTata Motors(タタモーターズ)。前年比59%増 、販売台数にして20万台弱を伸ばして、こちらも過去最高の50万台超に至った。市場シェア14%は2位のヒョンデに対して1%未満差にまで肉薄するレベル。全7車種のラインナップの内、中型SUVのNexonが売れ行きNo.1のSUVとなったことは、ベンガルールの街中での印象とも符合する。

しかし、それ以上にEV化で先行している印象が強い。ある機関の推計によればEV版の『ネクソン』と小型のセダン型EV2車種の計3車種の売り上げは4万台を超えたそうで、同社販売数の8%弱を占めるに至ったという。

ヒョンデのEVが評判の芳しくない1車種に止まっているのに対して、この分野にアクセルを踏み込むタタがPV市場の中でどんな2位争いを繰り広げるか。2023年の注目すべきポイントとなろう。


《大和 倫之》

大和 倫之

大和倫之|大和合同会社 代表 南インドを拠点に、日本の知恵や技術を「グローバル化」する事業・コンサルティングを展開。欧・米の戦略コンサル、日系大手4社の事業開発担当としての世界各地での多業種に渡る経験を踏まえ、シンガポールを経てベンガルール移住。大和合同会社は、インドと日本を中心に、国境を越えて文化を紡ぐイノベーションの実践機関。多業種で市場開拓の実務を率いた経験から「インドで試行錯誤するベースキャンプ」を提供。インドで事業を営む「外国人」として、政府・組織・個人への提言・助言をしている。

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