一体化とコストダウン:eAxle市場と技術トレンド…富士経済 饗場知氏[インタビュー]

一体化とコストダウン:eAxle市場と技術トレンド…富士経済 饗場知氏[インタビュー]
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eAxleがなぜ重要なのか。なぜ世界中のOEMが注目するのか。市場と技術動向について調査を続けている場知氏(富士経済 インダストリアルソリューション事業部 第二部 主任)が「2035年までのeAxle市場と技術トレンド」という1月31日開催のオンラインセミナーで講演する。セミナーに先立ち、講演内容や見どころを聞いた。

グローバル市場では主力コンポーネント

電動化が進む中国やEUでeAxleが注目されるのは分かるが、日本市場だけを見ていると、eAxleの重要性は理解しにくいかもしれない。HVが市場のメインであってEVは普及の兆しが見えたといってもまだ新車販売に占める割合は数パーセント(2022年11月のEV販売シェア3%。BEVのみの場合2.3%:EVsmart調べ)だ。日本のハイブリッドシステムは、すでにモーターや動力分割機構、一部はインバーターも一体化させている。eAxleの技術など改めてキャッチアップするまでもないのではないだろうか。

「直近の搭載トレンドを見るとたしかにeAxleを搭載する車両は限られています。しかし、eAxleサプライヤの製品ラインアップ状況をみると、搭載車種の限定ほぼなくなりますし、グローバル市場としてみれば、eAxleはこれからの自動車の主力コンポーネントになりうる存在として見ています。世界を相手にしているサプライヤー、メーカーであれば技術トレンドを押さえておく必要があります。

eAxleの基本はモーター、インバーター、ギアボックスを一体化した「3in1」です。しかし近年の動向をみると、これに「4in1」となるDC/DCコンバーター、「6in1」となる車載充電器やジャンクションボックスをつけましょう、さらには駆動系やバッテリECUまでも一体化する「8in1」まで現れています。一体化、小型化、軽量化、コストダウンのニーズは非常に高いものといえます。」

一体化・小型化への必然性

確かに、グローバル市場ではeAxle化の動きが活発だ。なぜだろうか。この疑問に場氏は次の用に答える。

「電動車も以前はモーターやインバーターは独立した別体型が主流でした。しかし、市場が拡大するにつれて、小型化や軽量化、コストダウンの要求が高まります。小型化や軽量化やコストダウンが可能となるeAxleへのニーズは必然ともいえるでしょう。

一方で、自動車業界は「CASE」主点での開発が進められていますが、Electric以外にも、Connected、Autonomous、Shared & Servicesといった幅広い開発も取り組まなければならないため、Electricの開発工数が削減できるeAxleの需要は非常に高くなっています。

もうひとつ要因として電動パワートレインの高電圧化です。ポルシェ「タイカン」の800Vを皮切りに中国自動車メーカーや北米自動車メーカーも800Vや1,200V対応EVの市場投入を進めており、これら高電圧対応EVにもeAxleが搭載される予定ですので、eAxle需要を押し上げています。」

このような市場の盛り上がりは、市場が成立し成長している証左ともいえるが、同時に価格競争が始まっているということも意味する。発注元であるOEMは、パワートレインが変わろうとも調達のポイントは一定の品質を担保しつつ、価格、小型化、軽量化であることに変わりはない。バッテリーの価格はあまり下げられないとすると、電動車における基幹部品のコストニーズは内燃機関と同等かそれ以上と言っていいだろう。

ハウジングやケースを一体化でき、部品点数や製造工数も下げられる、効率化・高電圧化にも対応できるeAxleは、コストダウンと軽量化を両立できるソリューションだ。場氏が「eAxleは必然」というのもうなずける。

eAxleによってもたらされる業界変化

eAxleがもたらす変化を、別体だった部品が一つになるだけ、扱う製品が変わるだけととらえるのは危険だ。OEMへの供給戦略、ひいては製品の設計や販売戦略にかかわる問題だからだ。

「800Vなど高電圧パワーユニットでは、パワー半導体もIGBTからSiC、GaNへのシフトが加速するといわれています。半導体調達もこれに対応しなければなりません。もうひとつ状況を複雑にしていることがあります。1年前までは、eAxleを手掛けるサプライヤーは一部でした。しかし、現在は中国系サプライヤーがeAxleの市場に参入が相次いでいます。前述した価格競争とも関係しますが、中国サプライヤーの価格競争力は既存サプライヤーにとって脅威です。日本電産が画期的なeAxleを発表したときは、業界に大きな影響を与えました。現在、中国サプライヤーが提供するeAxleの価格は、それに匹敵するインパクトがあります。」

場氏は、中国サプライヤーの台頭によりeAxleさえすでにコモディティ化が進んでいることを示唆した。調達元であるOEMメーカーにとって必要なのは、一定の品質・基準を満たすコンポーネントとしてのeAxleだ。その条件が同じならばメーカーは価格の安い方を選ぶ。

日本企業がeAxle市場で負けていい理由はない

「定格100kWのモーターと60kWのモーターの価格差はそれほど大きく変わりません。このためeAxleを車両モデルごとに細分化する必要はありません。加えて、電動車(CASE車両)の機能や価値は、ソフトウェアにシフトしています。求められるのは、価格競争力、小型軽量化、そしてOEMメーカーのソフトウェアとの相性や相互接続性です。」

これからeAxle市場に参入する場合、チャレンジングな取り組みになるが、「グローバルで主流となるであろう電動化やeAxle市場で日本OEMやサプライヤーにも頑張ってほしい」と場氏はいう。

では、どうすればいいのか。どうすべきなのか。この答は簡単ではない。「これをすれば大丈夫」という戦術があるのかさえ定かではない。新しい技術がコモディティ化することで競争が激化し、難しい戦略を迫られるのはeAxleに限った話ではない。工業製品全般に言えることだ。だからこそ、市場動向や技術トレンドをキャッチアップして自社に最適な選択を模索・検討しなければならない。

饗場氏が登壇するセミナー「2035年までのeAxle市場・技術トレンドとBluE Nexusのチャレンジ」は1月27日申込締切だ。詳細はこちらから。

《中尾真二》

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