変わると言われてもどうすれば?…モビリティビジネスの動向をマクロ視点から読み取り戦略に落とし込むセミナー

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日本は第7波襲来でなかなかアフターコロナが見えてこない。が、世界ではロックダウンや渡航規制、移動規制、マスク規制が解除または緩和されつつある。モビリティビジネスの今後も気になるところだが、先が見えない中、なにをどうすればいいのかわからない。そんな本音も聞こえる。

MaaS革命やCASEという言葉もどこか現実味がなく未来の話、少なくとも自分が業界にかかわっている間には他人事で済むと思っている業界関係者もいるだろう。とはいえ、世界の潮流は止められるわけでもなく、自動車産業も確実に変化を遂げている。このギャップを埋めるには、脱炭素やカーボンニュートラルに代表されるGX(グリーントランスフォーメーション)、SX(サスティナビリティトランスフォーメーション)といった長期スパンの動きを根底にとらえる必要がある。

ここを抑えないで、現象や各論ばかり見ていても「それは無理筋だからできない、やらない」で終わってしまう。

このテーマについて、住商アビーム自動車総合研究所 代表取締役社長 大森真也氏が「モビリティSX:アフターコロナに向けたモビリティビジネスの動向」と題する講演を行うという。GX、SXは単に環境活動家の理想論の話ではない。グローバルビジネスにおける戦略の共通理念のようなものだという。大森氏に講演の見どころとあわせて聞いた。

気候変動は世界共通の経済リスク

――産業界には、脱炭素やSDGsに対して、理想はわかるけど課題が多く実現困難。なので真剣に取り組めないといった認識が少なからずあると思っています。なぜグローバルではGX、SXのような戦略が重要なのでしょうか。

大森氏:World Economic Forum(WEF)が年初に発表した「グローバルリスクレポート」には、今後10年までのグローバルリスクトップ10を公表しています。その中で短期(2年以内)、中期(2~5年)、長期(5~10年)で上位にくる項目のほとんどが気候変動など環境に関する問題です。続いて社会的システムや生活の破綻など社会や経済にかかわる問題がきます。

ちなみにこのレポートは1月に発表されているので、ウクライナの状況は含まれていません。講演ではロシア侵攻の問題も含めた考察をする予定ですが、このような地政学的対立も大きなリスクです。

それぞれの事象は複雑に絡み合っているので、個別の課題を解決しても負の連鎖が止められません。解決には国際的な取り組み、技術革新も重要ですが、なにより重要なのは、行動変容や社会システムそのものの変革です。

――行動変容とは、我々も考え方や生活スタイルを変える必要があるということでしょうか。

COVID-19やロシア侵攻のように要因は自然の摂理から政治的なものもありますが、変革や発生する事象は制御しきれるものではありません。例えば、半導体不足によるサプライチェーンの乱れは、企業側が供給不足や不安定を前提とした仕組みにチェーンを作り替えることで、収束を見せ始めています。

想定外のリスク、混乱は起こる前提で、システムや社会を作り替えていくアプローチを受け入れる必要があります。

技術革新と行動変容で社会を変える

――しかし、システムを変えるのは簡単ではないし時間がかかりますよね。

はい。そのためWEFでも段階的なアプローチをとっています。例えば、題のひとつに電動化(EV)があります。カーボンニュートラル、CO2削減という視点では、ゼロエミッションのEVが有効なのはほぼ間違いありません。カーボンニュートラルでは、2050年のひとつゴールとして、その前段階の2030年をマイルストーンに据えています。2030年までの10年を確立済みのイノベーションで対応し、その次の20年(2030~2050年)を未確立のイノベーションで達成しようというロードマップで動いています。

確立済みのイノベーションとは既存のエネルギーの効率化・クリーン電源の活用です。ここでも行動変容は不可欠とされています。EVが車両の排出ガス削減に効果的だからといって、あと10年ですべてをEVにすることは不可能です。しくみや社会を変えることでCO2削減やエネルギーの考え方を変える必要があります。

未確立のイノベーションは、水素エネルギーや合成燃料、CCUS(二酸化炭素回収・貯留)などが挙がっています。2050年までに技術やインフラを確立し、それ以降の本格的な運用に備えます。

――環境問題への対応、温暖化対策は国際社会の共通のゴールであり、達成するためにはテクノロジーだけでなく社会も変わらないとだめということですね。

京都議定書で、国際社会はCO2削減というひとつのゴールに合意しました。共通の正義が定義されたといってもいいでしょう。ゴールに向けて各国が個別にターゲット(目標)を決めて動いているわけです。ただし、そのプロセスについては決め事や合意があるわけではありません。共通理念で合意したものの、総論賛成・各論反対の状況があります。

製造業のような産業界においてカーボンニュートラルは、社会問題、外部要因としてビジネスから切り離すことができていました。複雑化する世界においては、どの業界も関係する市場、技術がどんどん広がっています。いままで無関係だった領域も内部化して考えなければなりません。お題目や理想論ではなく、グローバルリスクとして自分事として取り込んでいく必要があります。

製造業の枠組みは通用しない

私は、ビルゲイツが環境問題に目覚めたときに書いた本の翻訳をしたのですが、彼は著書の中で「そこには、IT業界やDXとは違ったスケールの問題があり、タイムスパンも異なる。ムーアの法則なんて通用しない」と述べています。いままでの「ものづくり」の考え方だけでは立ち行かない状況があるのは間違いありません。

――気候変動が現実の経営リスクになっている現状で、いままでの枠組みで考えていてはいけないということですね。実際、自動車業界にはどのような変化があり、どう対処すればいいのでしょうか。

それは、共通認識の総論に対する各論の話になります。詳細はセミナーでお話することになります。

まず、総論部分では、いま述べた環境問題の背景事情を解説します。マーケティング方面では、ベビーブーマーからZ世代、アルファ世代などジェネレーションの多様化、COVID-19による移動様式の変化も取り上げます。サプライチェーン問題も解説します。

次にCASEの4分野についての世界的なトレンドを掘り下げます。自動運転やシェアリング、コネクテッドにかかわる新しいビジネスでは、共通のデータプラットフォームの存在が重要視されています。EUのGAIA-X、ドイツのCatena-X、自工会の取り組みなども取り上げる予定です。サーキュラーエコノミー、日本型モビリティの代表である軽EVと小型モビリティ(LSEV)の可能性など、扱うべき技術、分野は多岐にわたります。

これらを、自社ごとの各論、つまり戦略や戦術の参考になればと思っています。

大森氏が登壇するオンラインセミナー「アフターコロナに向けたモビリティビジネスとDX」は8月19日申込締切。
詳細はこちら
《中尾真二》

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