スズキらしい軽EVで勝負する…スズキ 取締役専務役員 長尾正彦氏[インタビュー]

スズキらしい軽EVで勝負する…スズキ 取締役専務役員 長尾正彦氏[インタビュー]
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一昨年に創業100周年を迎えたスズキ。中期経営計画に「小・少・軽・短・美」を追求することをあらためて表明した。このコンセプトに基いた「スズキらしいカーボンニュートラルへの歩み」とは、どのようなものか。スズキ株式会社 取締役専務役員 東京駐在 渉外担当の長尾正彦氏に聞いた。

長尾氏は、6月30日に開催される 【連続セミナー】中西孝樹の自動車・モビリティ産業インサイトvol.8 スズキのゲスト講師として登壇し、このテーマで詳説する予定だ。

EVへの過渡期ではトヨタTHSも活用

---:本日は「スズキらしいカーボンニュートラルの歩み」について具体的にお聞きしたいと思います。

長尾正彦氏(以下敬称略):はい。まずEVの投入については、日本、インドを含めて、2025年までに技術開発を進め、投入していく予定ですが、それが完成するまでの間の繋ぎとして、ハイブリッドシステム搭載車の販売を考えています。

インドのハイブリッドシステム搭載車販売台数は、10%ほどにとどまっていますが、インドの電力事情等を考えると、一日も早くインドの空を青くするにはハイブリッドが最適解と考えています。合理的な価格でインドの環境を良くするということを考え、トヨタのハイブリッド技術も上手く活かしたいと思っています。

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---:インドで販売の10%を占めるハイブリッドとは、エネチャージのことを指していらっしゃるのでしょうか。

長尾:エネチャージから進化したマイルドハイブリッド(筆者注:ISGとリチウムイオンバッテリーを搭載し、静かなエンジン始動とともにエネルギー回生とモーターのアシスト量を増やしたもの)を指しています。これを、いわゆるストロングハイブリッドにステップアップしながらコストダウンもして、トヨタからノウハウをいただきながら進めていきます。

---:スズキのストロングハイブリッドでは、AGSと組み合わせたものがありますが、これとトヨタのTHSの両方を使っていくのでしょうか。

長尾:はい。トヨタとの提携では、将来的にはTHSを使わせていただくことになっていますので、当社固有のスズキハイブリッドシステムに加え、THSを搭載した車も出てくる可能性はあります。

2025年までに軽EV投入 商用が先

長尾:日本国内における軽EVについては、2025年までに投入の予定です。軽自動車ですので、価格や航続距離や規格など、いろいろなハードルが高いですが、チャレンジします。「地方の足」の軽EVとして、シンプルで軽いものを、お求めやすい価格で提供するという視点で、技術開発を加速しております。

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その時に参考にしている考え方が、当社の軽自動車の原点である「アルト」の精神を忘れずにやるということです。スズキの歴史がアルトをきっかけに、これまで良い具合に進んできましたので、この精神を常に忘れずにやることを心掛けています。

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---:先日、日産と三菱から軽EVが発表され、市場の反応はポジティブなものが目立つように感じます。こういった反応をどのように捉えていらっしゃいますか。

長尾:弊社は後発ですから、後発でいくことのポイントは何なのか、スズキらしいEVとは何なのかということを、技術者のあいだで問いかけながら、緊張感を持って取り組まなければならないと社内的には捉えています。

社長がしきりに社内に発破を掛けているのは、重くなったら軽自動車ではなくなってしまうということです。安全面に配慮しながら、アルトの原点に立ち返って、かつ、先行メーカーとの違いをうまく出しながらチャレンジしています。

---:軽EVは、乗用が先になるのですか。それとも商用が先でしょうか。

長尾:両方やりますが、早期にやらなければいけないのは商用だと思っています。現に、物流関係の企業さんからも期待されておりますし、法人需要的に言うと商用からです。トライアンドエラーを繰り返しながら、その次に乗用にいくと。順番的にはそういう形になると思います。もちろん、乗用の開発もテーブルに載せてやっておりますが、当面の順番は多分商用が先になるかと思います。

インドでEVを現地生産 CNGにも注力

---:インドでのカーボンニュートラルは、どのように進めていくのでしょうか。

長尾:先ほど申し上げたハイブリッドへの取り組みに加えて、圧縮天然ガス車であるCNG車の展開に取り組み始めています。すでに、当社のCNG仕様は9車種ほどありますが、増やしていく予定です。

これはなぜかと言うと、インド政府による2070年のカーボンニュートラル達成、だいぶ先にはなりますが、ここへの現実的なアプローチとして、CNG車を選択するという動きがあります。

CNGは、CO2・SOX・NOXをガソリンや石炭に比べ大幅に削減できるため、はるかに環境に優しく、インド政府もCNG充填拠点を増やそうとしています。

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なぜCNGにこだわっているかと言うと、モディ首相の考え方として、エネルギーの自立をしなければならないという方針があり、またインドでは、牛糞がエネルギーの宝の山になり得るということで、そこからバイオ燃料の生成を行っていくことになっています。インド政府も本気で取り組んでいますし、マルチスズキも政府とタイアップしていけると思っています。

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現在、CNG車におけるスズキのシェアは85%ですが、ヒョンデとタタが参入し、これから市場が盛り上がってくると思いますので、他社さんに負けないように、アドバンテージを最大限活かして増やしていかなければならないと思っています。

---:インドでのEVについては、現地工場での生産になるのでしょうか。

長尾:はい。インドでEVの投資にコミットしております。3月に社長の鈴木がインドに入りまして、ちょうど岸田総理が訪印した際に、両首脳を前にして、鈴木社長がインドでのEV関連投資についてコミットしました。バッテリーについても地産地消でやっていくことになります。

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インドのエンジニアを活用

---:ハイブリッド、CNG、そしてEVと盛りだくさんですね。

長尾:はい、こういったいろいろな課題に取り組む中で、人員工数の確保が常に話題に上がります。これは一丁目一番地の重要な課題です。業務効率化はもちろんですが、人的リソースについては、インドとの連携プレーをしていきたいと考えています。

マルチスズキの中で技術者が育ってきておりまして、今まではどちらかと言うと、インドではモデル開発において車の外側だけをやってきたのですが、これからは技術開発にも携わっていくということで、日本人・インド人の垣根なく、インドから浜松に、日本からもインドへ行ったりして、うまく融合していきたいと思っています。

そして、インドのソフトウェアエンジニアも積極的に採用しています。幸い、マルチスズキはトップシェアですので、来ていただきやすい状況がありますし、インド工科大学からもエンジニアをリクルートして、現地でCASE対応の取り組みも始めています。インドに拠点を置いているというメリットを最大限に活かしながら、必要な人員の確保を始めています。

EV共同企画ではコンパクト車を担当

---:最後に、トヨタのEV共同企画・開発の中で御社がコラボ相手として挙がっていますが、こちらの進捗はいかがでしょうか。

長尾:トヨタ及びダイハツと連携して、小型EVプラットフォームの共同開発に参加しています。おかげでスズキ側にもEVの技術蓄積ができつつありますので、それを加速して次の商品化に結び付けていくことをやっているところです。

長尾氏が登壇するオンラインセミナー 【連続セミナー】中西孝樹の自動車・モビリティ産業インサイトvol.8 スズキは6月30日開催。
《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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