新連載[スピーカー 次の一手]ドアをスピーカーに作り替える…デッドニング

ライトな「デッドニング」の施行例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。
  • ライトな「デッドニング」の施行例(製作ショップ:サウンドクオリティー<千葉県>)。
  • 「デッドニング」の施行例。
  • 「デッドニング」の施行例。
  • 「デッドニング」の施行例。
  • 「デッドニング部材」の一例(フェリソニ・C-1)。
  • 「デッドニング部材」の一例(フェリソニ・DS-1.5WP)。
  • 「デッドニング部材」の一例(フェリソニ・S-1)。

カーオーディオシステムの音を良くしたいと思ったら、「スピーカー交換」が有効だ。ゆえに多くのドライバーがこれを実行しているが、そのスピーカーの良さをさらに引き出せる手段がいくつかある。当特集では、その具体的な内容を1つ1つ紹介している。

「デッドニング」とはすなわち、「スピーカーを作る」作業!

今回は、「デッドニングの追加」という作戦をクローズアップする。「スピーカー交換」を行う際にはなんらか「デッドニング」も同時に施行されることが多いが、ライトな内容にとどめられるケースも少なくない。もしもそうであったなら、そこのところをテコ入れすると聴こえてくる音の質がさらに上がる。つまりライトな「デッドニング」しか成されていないということは、“伸びシロ”が残されているということに他ならないのだ。

なぜなら、「デッドニング」とはすなわち「スピーカーを作る行為」だからだ。これを手厚く実行すればするほどドア内部の音響的なコンディションが上がり、ドアがスピーカーへと変貌していく。

もう少し詳しく説明しよう。まずホームオーディオ用のスピーカーをイメージしてほしい。ホームオーディオのスピーカーは基本的にすべて、スピーカーユニットが箱に取り付けられた状態で完成品となっている。要するに、箱も含めてスピーカーだ。各メーカーは、箱の部材に何を使うか、どんな形にするか、どんな内部構造にするか等々にもさまざまな英知を注入している。

で、カーオーディオではクルマのドアが箱の役割を負うのだが、ドアはそもそもスピーカーとして設計されてはいない。なので、スピーカーが取り付けられることとなる鉄板は薄くて強度が低い。なので何の対策もなくスピーカーをそのまま取り付けると、“踏ん張り”が効かず振動板を動かそうとする力をロスしがちだ。

そしてその薄い鉄板は共振しやすい。大きな音を鳴らすと割と簡単にビビってしまう。耳に付くほどのビビリ音を立てることもあり、それほどまで大きな音ではなかったとしても、共振すれば何らか雑音が発生しスピーカーが奏でる再生音を曇らせる。

しかし「デッドニング」を施せば共振を抑えられ、ドアのスピーカーとしての完成度を高められるのだ。

「デッドニング部材」の一例(フェリソニ・C-1)。

段階を踏みながら「デッドニング」を進めていくことで得られる利点とは?

ところで「デッドニング」は、「スピーカー交換」と同時に手厚く行えたら理想的ではあるのだが、そうしようとすると多くの予算が必要となる。装着するスピーカーの性能を十二分に引き出そうとするのなら最初から十分に手をかけた方が良いのは確かだが、なかなかそうもいかない。

なので「デッドニング」は、段階を踏んで進めていっても良い。むしろそうすることで得られる利点もいくつかある。まず、都度の負担が少なくてすむ。そして、作業を施す度に音が良くなる感動を味わえる。また、各作業がどれほどの効果を生むのかを体感できる。その体験は、後のカーオーディオライフの糧となる。

さらには当初は「デッドニング」を軽めにしておくと、「スピーカー交換」のために用意した予算を製品代により多く注げる。つまり、より良いモデルを手にできるのだ。

なお、少し背伸びをすると得られる満足度がぐっと高まる。特に廉価なスピーカーにおいては、1グレード上がったときの性能アップの幅が大きい。例えば、1万5000円の製品と3万円の製品との価格差は1万5000円だが、比率にすると倍も違う。この違いはサウンドクオリティにも如実に現れる。

ところで実は、まったく逆のアプローチも存在している。最初に「デッドニング」だけを行い、後から「スピーカー交換」を行うというのもアリなのだ。そうするとスピーカーは純正のままなので、作業の効き目とそれを行うカーオーディオ・プロショップのバリューをはっきり感じ取れる。そして後から「スピーカー交換」を行うと、そのスピーカーの性能を取り付けたときから存分に引き出せる。このような作戦があることも、頭の片隅に置いておこう。

「デッドニング」の施行例。

手をかければかけるほど、ドア内部の音響的なコンディションが良化する!

続いては、「デッドニング」を段階を踏んで行う場合の具体的な内容について説明していく。なお「デッドニング」にはショップごとでノウハウがあり、ステップアップのさせ方や細かなやり方に違いがある。というわけなのでここでは、その一例を紹介していく。

まずライトな「デッドニング」では、スピーカーの真裏への処置が施される場合が多い。スピーカーを取り付けた奥側の鉄板(アウターパネル)に吸音材や拡散材を貼り、スピーカーの裏側から放たれる音エネルギー(背圧)を弱めることが目指される。背圧は、ドア内部の鉄板を共振させる等の悪さをする。なので出どころでその影響を小さくしておこうとするわけだ。また、アウターパネルと内側の鉄板(インナーパネル)の共振しやすそうな場所に制振材が貼られる。ちなみに共振しやすいのは平らな広い面だ。プレスラインが入っている部分は強度が出るので共振しにくい。

そして追加メニューでは、制振材の貼る量が増やされる。どのような貼り方をするかは各店ごとで異なるが、共振を効果的に防ぐための最善の策がそれぞれ取られる。

さらには、サービスホールと呼ばれているインナーパネルの穴が制振材で塞がれる。そうすることで、背圧をインナーパネル内にある程度閉じ込められるからだ。結果、背圧がドアの内張りパネルを共振させる度合いを下げられる。

加えて音の「打ち消し合い」も減らせる。スピーカーの裏側から放たれる音と表側の音は音波が真逆の形になっていて、同一空間で交わるとお互いを打ち消し合ってしまうのだが、サービスホールを塞ぐとそれを抑制できるのだ。

また、内張りパネルに対しても手を加えるとベストだ。パネルの共振を止めるための方策や、パネル内の空間での音の響き方をコントロールする処置を行えば、状況はさらに好転する。

このように手を掛ければ掛けるほど、スピーカーの性能が一層引き出されることとなる。これを実行しない手はない。段階を経て「デッドニング」を実践し、導入したスピーカーの実力を目一杯堪能しよう。

今回は以上だ。次回以降も交換したスピーカーをより良く鳴らすための“次の一手”をさまざま紹介していく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集