英国のBAC社は10月12日、軽量スポーツカーの『Mono R』がオーストリアの「レッドブルリンク」において、市販車の最速ラップタイムを記録した、と発表した。フェラーリの『ラ・フェラーリ』を上回るタイムという。
英国でスポーツカーを少量生産しているBAC社
BAC社は、ブリッグス・オートモーティブ・カンパニーの略。イングランド北西部チェシャー州在住のブリッグス兄弟が設立し、スポーツカーを少量生産している。その名前を有名にしたのが、2011年春に発表された初代『Mono』(モノ)だ。
Monoは、英国の伝統を受け継ぐライトウェイトスポーツだ。フォーミュラマシンを思わせる1名乗りのボディはカーボンファイバー製で、車両重量はわずか580kg。サスペンションはザックス製で、サーキットの特性に合わせた細かい設定変更ができる。ブレーキはAPレーシング、アルミホイールはOZレーシング。一見するとサーキット専用マシンだが、英国ではナンバープレートが取得でき、公道走行も可能だ。
エンジンは英国のレース用エンジン、マウンチューン製の2.5リットルの直列4気筒ガソリンで、最大出力305hpを引き出す。0~96km/h加速2.8秒の優れたパフォーマンスを実現していた。
2.5リットルエンジンはプラス38hpの343hpに
このMonoの2世代目モデルの頂点に位置するのが、Mono Rだ。すべてのボディパネルがゼロから開発され、44の特注カーボンパーツが新設計された。ノーズの中央に取り付けられたLEDヘッドライトは、正面の面積を減らしている。全高は20mmダウンした。
マウンチューン製の2.5リットル直列4気筒ガソリンエンジンは、最大出力が38hp引き上げられ、343hpを獲得する。フォーミュラマシンにインスパイアされた「ラムエアインレットシステム」は、スロットルボディとシリンダーヘッドシステムに加圧空気を供給してパワーをさらに高める。さらに、高性能なドライブバイワイヤーモーターが、より迅速なスロットルレスポンスを可能にした。
排気量1リットルあたりのパワーは138hp。公道走行モデルの自然吸気エンジンとしては、世界最高という。エンジンの許容回転数も7800rpmから8800rpmに上げられた。0~96km/h加速は0.3秒短縮され、2.5秒で駆け抜ける。最高速は273km/hに到達する。
車両重量は25kg軽量化され555kgに
Mono Rは、すべてのボディパネルにグラフェン強化カーボンファイバー採用した世界初の量産車だ。革新的な素材を使用することで、繊維の構造特性が向上し、ボディパネルがより強く、より軽くなり、熱に対する性能が向上しているという。
また、Mono Rは、標準のMonoよりも25kg軽量化され、車両重量は555kgに抑えられた。1トンあたり618hpという優れたパワーウェイトレシオを実現した、と自負する。
Mono Rは、世界限定30台が生産され、世界中の既存のMonoの顧客に販売されている。英国本国でのベース価格は、19万0950ポンド(約2960万円)だ。
ラ・フェラーリのタイムを6秒短縮する1分38秒95の新記録
このMono Rが、「ピレリPゼロエクスペリエンス」の一環として、オーストリアのレッドブルリンクでタイムアタックを行った。タイヤは、ロードリーガルのピレリ「Pゼロ・トロフェオR」を装着する。
タイムアタックは、英国のレーシングドライバー、アダム・クリストドーロウ選手が担当した。全長およそ4.3kmのサーキットを1分32秒96で周回した。平均車速はおよそ196km/hだった。
このタイムは、レッドブルリンクの市販車の従来のラップレコードとして、ドイツのレーシングドライバーのフーベルト・ハウプト選手が乗るフェラーリのラ・フェラーリが打ち立てた1分38秒95を、約6秒短縮する新記録、としている。