コロナ禍による観光需要激減に直面した旅行業界は、昨年に実施された「Go To トラベル」で需要が一時的に持ち直したほか、金融機関による資金繰り支援策、持続化給付金など一連の手厚い支援を受けてきた。また、コロナ禍による行動制約の緩和を受けた海外では、観光需要が反動で増加している国・地域もあることから国内でも先行き期待感が高く、そのため2020年中の倒産や廃業は増加しながらも比較的抑制されてきた。
しかし、新型コロナ感染の再拡大によるGo To トラベル事業の停止に加え、今年も渡航制限や国内の移動自粛が続き、旅行需要は冷え込んだままとなった。さらに東京オリ・パラの開催で需要が見込めた海外観客の受け入れもできないなど厳しさが続き、大手旅行会社でも大幅な赤字決算、人員整理など、コロナ禍のダメージは深刻さを増している。その中で、経営体力に劣る中小旅行会社では、先行きの需要回復への期待感が薄れたことで事業に対する「あきらめ」ムードが広がり、倒産や廃業が増加する要因となった。
コロナ前から最も増加したのは、海外旅行のツアー企画や募集が可能な一般旅行会社で、コロナ前平均から122%増と倍増。前年からも60%増となり、2021年に入って急増傾向が顕著となっている。コロナ禍以前は、利益率の高い海外旅行需要は総じて堅調だったことに加え、中国などからインバウンド客の取り込みに成功したこともあり業績を伸ばした企業も多い。しかし、昨年以降は海外旅行需要が消失し、Go To トラベルも国内旅行に限定されたことから、海外ツアー専門会社などでは資金繰りが急速に悪化。また、新型コロナの収束は見込みが立っておらず、海外旅行の制限緩和時期も見通せないことから、中小の総合旅行会社や、海外ツアー専門会社を中心に事業の継続を諦めるケースが増えている。
◆リーマンショックや東日本大震災を大幅に下回る旅行会社の景況感
帝国データバンクがまとめた企業の景気動向を示す景気DIでは、旅行業は緊急事態宣言下の2020年4月に過去最低の0.0を記録した。以降は、Go To トラベル事業の恩恵も追い風に景況感が回復傾向にあったものの、短期間のうちに停止へ追い込まれたことで再び悪化。21年6月時点で8.0にとどまり、大きく落ち込む状態が続いている。