村田製作所は10月15~18日の期間で開催中の「CEATEC 2019」(千葉市)の自社ブース内で、「業界最高水準の電池容量を持つ」とした小電力機器向け全固体電池を披露した。高容量化が難しいとされる中で25mAhの電流容量を持つ製品の開発に成功。2020年度中の出荷を目指す。
披露された全個体電池は小電力で稼働する小型機器向けに開発されたもので、電解質に不燃性個体を使用することで「単純構造のため小さくても高容量」とし、リチウムイオン電池など液体を用いる蓄電デバイスと違い「安全で燃えない、漏れない」という特徴を持つ。また、「表面実装が可能」ということで他の半導体や電子部品と一体化して設計することもできる。
用途としてはヒアラブル端末やウェアラブル端末、バックアップ用電源、様々なIoT家電などへの実装を想定しており、リチウムイオン電池ではカバーできなかった活用方法を提案する。これらは村田製作所ならではの材料技術・セラミック技術・生産技術によって実現できたという。一方で、小電力にとどまるため、スマートフォンなどへの利用はまだ難しいとのことだった。
出展した全個体電池は、「高容量型」「超小型」「ワイヤレス充電型全固体電池モジュール」の3種類。高容量型は電圧が3.8Vで容量は2~25mAh。サイズは5~10(長さ)×5~10(幅)×2~6mm(高さ)で、ウェアラブル端末やヒアラブル端末などの小型機器向けとなる。液体を使わない全個体電池ならではの特徴が活かせそうなのが超小型モジュールで、そのサイズは1.0~3.2mm(長さ)×0.5~2.5mm(幅)×1~2mm(高さ)しかない。電圧は1.6~2.0Vで、容量は0.01~0.2mAhとなる。
もう一つの「ワイヤレス充電型全固体電池モジュール」は、高容量型全個体電池に充電ICや保護IC、スイッチングレギュレータIC、ワイヤレス給電ICを一体化したもので、容量は25mAhとパワフルなことからウェアラブル端末での用途などが想定されるという。
会場ではこれを搭載したミニカーが、小さなオーバルコースを走るデモコース用意。一定時間走ると充電スポットにピットインして充電するデモを繰り返す様子を披露した。ワイヤレスで充電するため、充電のために接続することは不要。ワイヤレス充電も独自に用意したものとのことだった。 なお、この全個体電池は「CEATEC AWARD 2019」で最高の栄誉である経済産業大臣賞を受賞した。