【レンジローバー ヴェラール 試乗】未来志向はアップルに通じる「ミニマリズム」…河西啓介

レンジローバー ヴェラール
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レンジローバー・ファミリーの中の異端

ジャガー・ランドローバー・ジャパンが主催する試乗会に参加した。

JR長野駅でクルマをピックアップし、スキーリゾート地として知られる白馬村を目指す。その道中に現れる雪道で、ジャガーおよびランドローバー車での雪上ドライブを体験してほしいというのが試乗会の趣旨だった。

ランドローバーのフラッグシップである『レンジローバー』から、ジャガーのスポーツカー『Fタイプ』までが揃った試乗車の中で、僕が選んだのはレンジローバー『ヴェラール』だ。レンジローバー・ファミリーの中で、『レンジローバー・スポーツ』と末弟である『イヴォーク』との中間に位置するモデルである。

そのファミリーの中で、ヴェラールは明らかに“異質”な存在だ。2017年に初めて登場したときは、そのデザインに驚いた。スムージングされたカスタムカーのような突起のないボディ、その上にコンパクトなキャビンを載せたプロポーションは、まるでコンセプトカーがそのまま市販化されたようだった。

レンジローバーは本来、あらゆる道を走破するために生まれた質実剛健なクルマで、その機能を追求した“結果”としての造形であったはずだ。しかしヴェラールの場合は明らかに “デザイン”が目的化していた。そんなレンジローバーの変化を象徴するようなヴェラールが、いったいどんなクルマなのか気になった。

外装以上にデザインされたインテリア

試乗日は春の訪れを感じさせるような陽気で、厚手の上着を着ていると汗ばむほどだ。長野の市街の道路には、雪はまったく見られなかった。暖冬の影響で、もとより雪は少なかったようだが、前日に降った雨で、残っていた雪も溶けてしまっていた。

というわけで、主催者の思惑とは少し違ってしまったのだが、僕はヴェラールで快適なオンロード・ドライブを楽しんだ。ヴェラールには2リッター直4ディーゼル・ターボ、2リッター直4ガソリン・ターボ、3リッターV6ガソリン・スーパーチャージャーという3つエンジンがあるが、試乗車は3リッターV6を積んだ、最上級グレードの「HSE」だった。

ヴェラールのプライスは705万円からスタートするが、この3リッターV6・HSEの価格は1160万円。その浮世離れした外観に違わず、じつは相当な高級車なのである。

ヴェラールに乗り込んで感心したのは、外装に負けず、というかそれ以上に“デザイン”されたインテリアの造形だ。

ダッシュボード中央にはナビやオーディオを表示する10.2インチのタッチスクリーンが備わる。その下にあるコンソールへとシームレスにつながるピアノブラックのセンタースタックには、スタートボタンを押すとエアコンや車両の情報などが美しく浮かび上がる。

このスタック部分もタッチスクリーンで、各種の表示や設定をスマートフォン扱うような感覚で操作することができる。インストゥルメントパネルに存在する物理的なスイッチは3つのダイヤルだけで、ナビ、エアコン、オーディオ、インフォテイメントなどの操作はほとんどをタッチ操作で行うのだ。

シンプルかつ美しくデザインされたヴェラールの室内に収まると、とてもあたらしい乗りものに乗っている感じがする。もしアップル社が「iCar」をつくるとしたら、こんなふうになるんじゃないか、と思った。それはギラギラとした造形で満艦飾な装備を主張するドイツ車とは対象的な、アンダーステイトメントをもってよしとする英国車らしいセンスであると感じた。

スタイリングと走りのギャップに萌える

さて、相変わらず道に雪はない。380psを発揮する3リッターV6エンジンは心地よいハミングを聴かせながら、約2トンの重量級ボディを悠々と走らせる。

僕は以前、V8を積む『ディスカバリー2』とV6を積む「ディスカバリー4」に、それぞれ1年ほど乗っていたことがある。その頃とは時代もクルマづくりも大きく変わったが、ドライバーを急かさず、ゆったりとした気持ちにさせるランドローバー伝統の鷹揚な乗り味は、このヴェラールにも変わらず受け継がれていると感じた。

さらにクルマを走らせ、目的地の白馬に近づいた頃、ようやく道の両側に雪の積もった山肌を見ることができた。せめて雪上試乗の“気分”だけでも味わおうと、幹線道路を逸れ雪の残る山道に分け入った。

センターコンソールのダイヤルで、路面に合わせた6つのモードが選択できる「テレインレスポンス」がランドローバーの“売り”だ。やっと出会えた雪道に乗り入れると、さっそく「スノー」モードをセレクトする。

“雪深い”風景の中にクルマを置きたいと言うカメラマンのリクエストに応えて、深く雪が積もった坂道をゆっくりバックで上がっていく……、などということもやってみたが、ヴェラールは4つのタイヤで雪を踏みしめ、それぞれの車輪にブレーキをかけたりトルクを分配しながら、大きな車体をグイ、グイと事もなげに進めていく。

世界唯一の四輪駆動車専業メーカー、ランドローバーの挟持を感じさせる実直な仕事ぶりと、未来嗜好のスリークなスタイリング。その対比に思わず“ギャップ萌え”してしまった。森の中にヴェラールが置いてあったら、地球に降り立った宇宙船のように見えるだろうか、などと想像を巡らせる。

先述したように、ヴェラールの内外装デザインは、iPhoneやMacBookといったアップル製品に通じるミニマリズム(最小限主義)を感じさせる。高い機能を備えながらも、見た目やインターフェイスは極力シンプルに徹するという考え方だ。

タフで壊れないiPhoneやMacBookがあったらどんなにいいだろう……、などと日頃から考えているアップル信者の僕にとって、雪の中で佇むヴェラールは、なんだかとても魅力的に見えてくるのだった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

河西啓介 編集者/モータージャーナリスト
自動車雑誌『NAVI』編集部を経て、出版社ボイス・パブリケーションを設立。『NAVI CARS』『MOTO NAVI』『BICYCLE NAVI』の編集長を務める。現在はフリーランスとして雑誌・ウェブメディアでの原稿執筆のほか、クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、テレビコメンテーターなどとしても活動する。

《河西啓介》

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