【池原照雄の単眼複眼】原材料高などで2期ぶり営業減益へ…逆風受ける乗用車7社の2019年3月期

スズキの鈴木社長
  • スズキの鈴木社長
  • トヨタの白柳専務
  • 日産自動車の軽部CFO

第2四半期はトヨタなど4社が増収増益を確保

乗用車メーカー7社の2019年3月期の第2四半期累計(4~9月期)業績は、原材料費の上昇や新興国通貨の下落影響があったもののトヨタ自動車など4社が営業増益となった。通期の業績予想についても3社が上方修正した。だが、原材料高などに加え、大量リコールを抱えるSUBARU(スバル)など個別企業の問題もあり、7社合計の通期営業利益予想は前期比7%減と2期ぶりの減益が避けられない情勢となっている。

第2四半期での本業の儲けを示す連結営業利益は、トヨタのほかホンダ、スズキ、三菱自動車工業が増益を確保し、この4社は純利益ベースでも増収増益だった。トヨタは中国、ホンダはアジアでの二輪車、スズキはインド、三菱自は東南アジアと、特定市場・分野での好調が利益増に寄与した。

これに対し、減益となった日産自動車など3社は個々の事情が収益を圧迫した。日産は米国での事業体質の改善に向けた在庫調整やインセンティブ抑制、マツダは7月の西日本豪雨という自然災害による生産減、さらにスバルは完成検査問題などによるリコール費用の増大、である。マツダは60%、スバルは74%と大幅な営業減益を余儀なくされた。この結果、第2四半期累計の7社合計の営業利益は、2兆3272億円となり、1%の小幅増益にとどまった。

○乗用車7社の19年3月期営業利益予想(億円、%)
社名 営業利益(増減率)今回の修正 
トヨタ 2兆4000億円(0%) △
ホンダ 7900億円(▲5%) △
日産 5400億円(▲25%) ―
スズキ 3500億円(▲6%) △
マツダ 700億円(▲52%) ▼
スバル 2200億円(▲42%) ▼
三菱自 1100億円(12%) ―
(合計) 4兆4800億円(▲7%)
※▲はマイナス。「今回の修正」の△は上方、▼は下方、―は据え置き

収益改善の足を引っ張る原材料費の上昇

一方、通期予想については、第2四半期までが増益だった4社のうち三菱自を除く3社が上方修正した。だが、減益組はマツダとスバルが大幅な下降修正とし、日産は従来予想を据え置いた。また、上方修正した企業の営業利益はトヨタが前期比横ばいになったものの、ホンダとスズキは減益のままであり、やや慎重な予想とした。このため、現時点で今期に増益となるのはトヨタと三菱自のみとなっている。7社合計の営業利益予想は4兆4800億円で前期実績を7%下回り、2期ぶりの減益となる見通しだ。

その原因は、いずれも50%前後の大幅な減益予想としているマツダとスバルの影響が大きいが、各社に共通する事業環境の悪化もある。原油高や貿易摩擦などもからむ原材料費の上昇と新興国通貨安である。原材料は米国が対中国との経済摩擦などを背景に関税を引き上げた鉄鋼、アルミのほか、原油価格の上昇がさまざまな資材・部品の価格アップに波及している。

第2四半期での原材料高による営業利益圧迫要因は、日産で539億円に及んだ。通期では800億円の減益要因と見込んできたが「米国の(関税引き上げ)影響も一部あって鉄鋼、アルミが全般的に上がっている。通期では800億円より少し増えるかなと見ている」(軽部博CFO)と、厳しい状況が続く。トヨタは原価改善の成果のなかに原材料費の上昇分を相殺反映しており、具体的な減益影響額は示していない。しかし、第2四半期での原価改善成果は300億円にとどまった。「原材料市況は上昇したが、それを上回る改善」(白柳正義専務役員)と言うものの、年間3000億円とされる平常時での原価改善力が、原材料高によって削ぎ落とされている実態が示されている。

長引きそうな中国の新車需要鈍化

新興諸国の通貨安も重くのしかかる。スズキは最大の収益源であるインドのインドルピー下落で第2四半期に105億円の減益影響が出た。同期はスズキにとって過去最高の業績だったが、鈴木俊宏社長は「7-9月期になると利益もダウンしてきた。(新興国の)為替や金利情勢を考えると、下期はそう簡単ではない」と、顔を曇らせる。

こうした悪化要因に加え、世界の市場拡大をリードしてきた中国の新車需要が、対米摩擦の影響もあって鈍化し、先行きの不透明感を高めている。日系でトップの新車販売を続けている日産は、足元の全体需要の悪化を受けて9月、10月と前年同月実績を割り込んだ。第2四半期の販売が前年同期を11%下回ったマツダは「米国との貿易摩擦などの影響で消費者心理は冷え込んでいる。業界でも在庫が積み上がっており、早期の需要回復は難しい」(青山裕大常務執行役員)と警戒を強めている。原材料高や中国の需要鈍化は、短期で改善に向かいそうもなく、自動車各社の下期は逆風に立ち向かう展開となっていく。

《池原照雄》

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