周りを山で囲まれた山梨県甲府市を早朝に通ることがあったら、市内にある「草津温泉」での朝風呂をお勧めしたい。
東京から山梨長野方面へのウィンタースポーツ旅行者や、また塩尻から安房峠を超えて富山や金沢方面へ抜ける、トラックドライバーらに利用者の多い甲州街道、国道20号線。甲府あたりで早朝を迎えるような旅程の際は、市内の「草津温泉」で朝風呂に入ってはいかがだろうか。
銭湯の料金で入れる温泉、非常にリーズナブルな点もうれしい。いつ行っても地元の常連でにぎわっている。新しく整備された道路と旧道に挟まれた場所にあるが、どちらからもよく見えるので、それほど場所が分かりにくいとことはない。
「至福の湯 四七度 源泉かけ流し 加温・加水なし」という入り口に出された看板の文言を見れば、細かい成分分析表などを見るよりもよほど期待は高まる。
低張性でpH8.0の弱アルカリ性を示すナトリウム‐塩化物泉。47.2度という源泉の温度も熱めで、かけ流しで入るのには良い温度ではないだろうか。こじんまりとしたこの規模の施設で、毎分207リットルの湧出量も注目。入ればたちまちポカポカ。それでいて低張性ということもあり、じっくり楽しめる温泉だ。お肌もすべすべになり、入った満足度も格別だ。
小さな露天風呂もあるのだが、浴室から景色を楽しむ類ではない。しかし、早朝より営業しており、日の出の遅い盆地である甲府の温泉なので、風呂から上がるとご来光、というタイミングも珍しくない。
玄関が真東に向いているこの草津温泉。ちょうど風呂から上がり出てくると、甲府盆地を囲む山々の向こうから太陽が昇ってき。番台に居た女性が出てきて「こんなにきれいな朝陽は見ないともったいない。少しの間開けておきましょうね」と、出入り口の扉を開け放った。なんでも山登りが好きで、今でも時々楽しんでいるのだとか。ご来光も登山の楽しみの一つ、と話してくれた。
この時期、湯上りにタオルを普通に持っているとたちまち凍り付いてしまった。そのくらい冷え込む甲府盆地だが、この温泉に浸かった後なら、ご来光を見物するのに門扉が開け放たれようとも、体が冷えることはない。
脱衣所で出会った男性は「皆さん早いなあ。もう出られてくるということはみなさん何時くらいに来られたのでしょうかね?」と聞いてきた。時計の針は7時を少し回っていた。私は先陣を切って入ったわけではなかったものの、6時半くらいだっただろうか。その旨伝えると。もっと早起きしてくればよかった、と妙に嬉しそうにしていた。遠方から楽しみにやってきたのだという。
小ぢんまりとした甲府の街中にある草津温泉。周辺には温泉施設は少なくないが、街中の名湯、甲府の草津温泉は是非とも入っておいていただきたい。