新型『ゴールドウイング』の技術発表会(11月28日、ホンダ青山本社)で、サスペンション開発責任者の桑原直樹さん(桑=正しくは異体字)に、新採用のフロントサスペンションについて教えてもらった。
日本でも2018年4月に発売する新型は、従来のテレスコピック式フロントフォークではなく、独自に開発した「ダブルウィッシュボーンフロントサスペンション」を用いているのだ。
「一般的なテレスコピック式サスペンションでは、路面からのショックを吸収する際にアウターチューブとインナーチューブのスライド、また両者のたわみによる摺動抵抗が発生します」(桑原さん)
「これに対しダブルウィッシュボーン式では、ショックを吸収するクッション機能と転舵を受け持つフォークホルダーを分離しています。両者を上下2つのアームで支える構成とすることで、クッションの摺動抵抗を低減させ、路面からハンドルに伝わるショックを従来より約30%低減しました」(桑原さん)
「また、この構造とすることでハンドルで操作するフォーク部の慣性マスを40%低減し、走行時のハンドリングを軽快にしました」(桑原さん)
さらに、このリンク式の構造をとるにあたって、全ての軸受け部にベアリングを採用することでストローク、転舵ともさらなるフリクションの低減に寄与。加えて、タイヤとハンドル双方の転舵軸にステアリングロッドで繋ぐ構造とし、ライダーからはグリップ位置がより近く、自然な操作フィールが得られる。
「これらによって1695mmのホイールベースがもたらす安定感を活かしたまま、切り返しや進路変更など、市街地での頻繁なハンドル操作にも軽快なハンドリングで応え、加減速時や路面ギャップによるショックの少ないシルキーな乗り心地を実現しています」(桑原さん)
ダブルウィッシュボーンサスペンション上下アームの角度設定により、ストローク軌跡を真上方向に設定することで、前輪とエンジン部とのクリアランスを最小化している点も見逃せない。エンジンを車体前方に寄せ、同時にエンジンヘッドの前後長を短縮することで、ライダーとパッセンジャーの乗車位置を従来よりも36mm前方に移動させている。
これによってホイールベースを従来と同等としながら、前輪分担荷重を最適化しハンドリングを軽快に。また、このサスペンション方式の採用により、従来のテレスコピック式フロントサスペンション転舵に必要とされたクリアランスを詰めることを可能とし、ステアリング軸のスリム化も達成した。
フルモデルチェンジとなったゴールドウイングはすべてを一新しているが、なかでもフロントサスペンションの大刷新は大きなポイント。いったいどんな乗り味なのだろう、桑原さんも自信満々。走らせるのが、今から楽しみで仕方がない!
※桑原直樹さんの「桑」正しくは異体字。