世界的な地図サービス会社HEREは、オーストラリア・メルボルンで開催された第23回ITS世界会議でにおいて、モバイルネットワークに支えられた協調高度道路交通システム(C-ITS)やスマートシティの実現に向けた基盤作りの提案などを行った。
昨年、HEREはそれまでのノキアからドイツのBMW、ダイムラーおよびアウディの3社自動車連合に売却され、それをきっかけとして同社は自動運転へ向けた開発を積極的に進めるようシフトしている。今年1月のCESでは3社がそれぞれ収集したプローブデータの活用を発表。それを受けて9月のパリショーではそれを活かすサービスを2017年にも実現するとの発表にこぎ着けた。今回の展示はそれを受けてのものとなっていた。
その一つの具体例が「スマートシティ」に向けた基盤作りをネットワークのつながりで実現しようとするものだ。信号などの交通インフラやクルマなど様々なトラフィックがネットワークでつながれば街中がより便利に活用できるようになる。たとえば、ユーザーが走行して収集したデータをインフラに活かせるなることが理想。その意味ではドイツの3社連合の傘下に入ったことは大きなプラスとなったことは間違いない。HEREとしてはそのハブとなることを目指している(HERE オートモーティブセールス 本部長 村上有一氏)。
自動運転に向けたトライアルは『HERE HD LiveMap』のデモで示された。C-ITSの中核となる技術で、現在の車両で利用できる世界最先端のクラウドベース マップ・アセットとして開発。その状況をデモでよりわかりやすく可視化した。自動運転ではワイヤレスネットワークへの接続、クラウドを利用する新世代ADASをどう活用するかがキーポイントとなるが、高精度で最新のコンテンツ情報にアクセスできるHERE HD LiveMapでは道路環境を極めて詳細かつ動的に表示できる。これによって、車両は車載センサーが検出不可能な「曲がり角の先」までを確認できる対応が可能となる。同社は既に北米及び西ヨーロッパのコネクテッドカーで採用される体制を整えている(村上氏)という。
一般ユース向けにより身近な展示もあった。それがスマートフォン上で使うマルチモーダル・シティナビゲーション用アプリ『HERE WeGo』だ。目的地を設定すると公共機関の遅延や交通渋滞などを考慮し、どの手段がもっとも適切かを判断してユーザーに提供できる。目的地ではカーシェアリング「CAR2GO」の空き状況もわかる。オフラインでも利用できるダウンロード型であるため、欧州のような国境越えでも使えるメリットがある。全世界の1300都市以上で対応を果たし、無料で提供されるが残念ながら日本は含まれていない。村上氏によれば「日本には多くの同様のアプリが存在しており、今後も展開予定はない」とのことだ。