フォードの日本撤退のニュースの衝撃はかなりショッキングなものだった。古くは、日本でまだ自動車メーカーが本格稼働する前に横浜で組み立て工場を構えたあたりから、日本のモータリゼーションを見守ってきたブランドだ。
日本の自動車ファンばかりか、自動車ユーザーの中にもフォードが原体験というドライバーも少なくない。フォード神奈川はそんなフォードを首都圏のベッドタウン、横浜市の港北ニュータウンを拠点に販売するディーラーだが、撤退まで半年を切った今、お店に伺って現在の状況を聞いた。
「ブランドの日本撤退を前に、弊社はこの秋、9月頃を目処に営業所を閉鎖する予定です。複数のブランドを展開されている他のフォードディーラーは他ブランドに転向、集約といった動きもあるようですが、弊社は現在はフォード神奈川のみでの営業に特化しておりますので、フォード撤退後のディーラー事業の予定はありません」と語ってくださったのはフォード神奈川港北ニュータウンの葛西店長。
フォード神奈川は、株式会社トップスジャパンを母体とするディーラー。特殊車両の製造や、輸入車のPDI業務なども手がけてきた株式会社トノックスの傘下の企業だ。関連会社の中にはウニモグの輸入販売を手がけるワイ・エンジニアリング株式会社や、福祉車両製造からクラシックカーのレストアまでも手がけるヤナセテック株式会社などもある、規模は小さいが自動車のプロ、輸入車を知り尽くした会社が運営するディーラーだ。そういったこともあり「営業所自体は閉鎖した後も保土ヶ谷サービス向上ではアフターメンテナンスなどを継続してお受けしていく予定です」と語る。
「港北ニュータウンは地域性もあって、やはりメインは『エクスプローラー』と『フィエスタ』などがよく出ました。しかし『クーガ』や『エコスポーツ』といった、他ブランドにないモデルもかなり反響をいただきました。現在はほぼ商品車両の自社在庫がかなりなくなり、デモカーと、インポーター在庫をご紹介している状況です」と比較的広いショールームに置かれた『マスタング』、エコスポーツ、クーガを見ながら、現状を話してくださった葛西店長。
実はこのショールームはその昔「ジャガー・ランドローバー港北ニュータウン」だった場所。スペースが大きいのも納得だ。「私たちとしてはちょうど4年前にブランドチェンジをいたしまして、フォード神奈川を発足させました。4年というと、ようやく地域のお客様に浸透し、次の買い替えも視野に入れて営業的にも、お客様とのコミュニケーションとしてもまさにこれからという時期でした。残念でなりません」と葛西店長、本当に悔しそうだ。
ただ「日本撤退となるので、どなたにでもお売りするということがしにくい状況です。今後確実にアフターフォローも手薄になっていくことが予想されますので。私どもとしても失礼な営業をするわけにはまいりません。そういったことをご理解いただいているお客様で、前からフォード車が気になっていたという方、昔からのフォードのファンの方にとっては、またとないチャンスだと言えるかもしれません。今国内にあるものしかご紹介できませんが」。長年輸入車販売を手がけてきた以上、輸入車ならではの営業を知り尽くした葛西店長はそう語ってくださった。
ディーラーにより事情は様々だろうが、リスクを理解してであれば、今こそフォード車を買う絶好のチャンスと言えそうだ。フォード神奈川に関しては、株式会社トップスジャパン保土ヶ谷工場で日本撤退後のフォード車のアフターメンテナンスを引き続き実施していくという。