首相府省傘下のマレーシア原子力発電公社(MNPC)は、マレーシアにおける原子力発電の導入に関する国民の合意を得ることができるかを決めるための意見聴取を年内に開始すると発表した。ザ・サンが報じた。
原子力発電プログラムの責任者、ジャマル・カイル・イブラヒム氏は、原子力発電の導入計画について決定を行う期限は政府から提示されていないとコメント。国民からの意見聴取の準備を進めている段階だと述べた。また、政府からは国民の意見を聞いた上で原子力発電所の建設候補地の選定や審査を行うよう指示を受けていると明らかにした。
今年6月、シンクタンクのマレーシア水・エネルギー調査協会(AWER)は、政府が7,663万リンギを投じて実施した原子力発電に関する調査結果を速やかに明らかにするよう要請していた。
2015年8月の時点で、世界で運転中の原子力発電所の数は437カ所、建設中の原子力発電所の数は67カ所、166カ所は計画段階で322カ所の原子力発電所の建設が提案されている。
MNPCが昨年末に実施した調査では、回答者の11%のみが原子力発電について適切に情報提供を受けていると回答。66%は2035年までにマレーシアの電源構成(エネルギー・ミックス)に原子力が含まれるようになるとの予想を示した。また72%は原子力発電計画の推進の是非については明確な意見を持っていないとし、意見聴取などのプロセスへの参加を希望すると答えた。
AWERが実施した調査では、回答者の91.47%が原子力発電所の建設案に関する情報が不足していると答え、90.52%は自宅付近への原子力発電所の建設に反対する姿勢を示した。
ジャマル氏によると、政府が候補地の選定など調査を開始した場合も、事前のプロセスが長い期間を要するため2029年以降の完成、稼働となると見られている。
マレーシアにおける原子力発電所建設推進論は2011年の福島第一原子力発電所の事故を受けてトーンダウンしていた。
ジャマル氏は、リスクが全くない発電方法はないとした上で、国民は原子力発電のプラス面やマイナス面両方に目をやり、判断をするべきと述べた。また、石炭や天然ガスへの依存を軽減する必要もあると指摘した。