EV、自動運転、未来のクルマはどうあるべきか…FOMM 鶴巻社長 × UIEvolution 中島会長 対談

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FOMM代表取締役の鶴巻日出夫氏(左)とUIEvolution取締役会長の中島聡氏(右)
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  • FOMM代表取締役の鶴巻日出夫氏
  • UIEvolution取締役会長の中島聡氏
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  • FOMM コンセプト One
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超小型電気自動車(EV)のベンチャー企業、FOMMの鶴巻日出夫社長と、ソリューションやプラットフォーム開発を手がけるUIEvolutionの中島聡会長がこのほど都内で、「自動車の今と未来」をテーマに対談した。

◆車載用スクリーンの重要性に言及

対談はまず、アップルやグーグルが自動車に強い関心を示していることについて、かつてマイクロソフトでチーフアーキテクトを務めた中島氏はどうみているのか、との問い掛けから始まった。

中島氏は「アップルとグーグルには違いがある」とした上で、「アップルは本気で自動車に入ろうとしていない」と指摘し、その理由として「彼らがやっている“CarPlay”は単にiPhoneの画面を自動車に映すだけで、あくまでもiPhoneを売るための道具でしかない。CarPlayの仕組みを自動車メーカーに入れてもらえばiPhoneがもっと売れるというもので、iPhoneのサブ画面の役割だ。結局、本丸の運転系をやるわけではない」と解説。

一方のグーグルは「それをもっと踏み込んでやりたいと思っているのがグーグルだ。グーグルとしては、とにかく広告を打てる場所が欲しくて仕方がないので、車載用スクリーンを乗っ取りたいのだろう」と中島氏はみる。CarPlayおよびグーグルの“アンドロイド・オート”は、ともにスマートフォン端末と自動車のテレマティクス装置を連動させることでは大きな差はないが、両社のスタンス、思惑には違いがあるとした。

また中島氏は「この2つの大きな会社が動きだせば、自動車メーカーとしては乗らざるを得ない部分がある」としながらも、「車載用スクリーンがある意味、だんだん重要になってきている。そこをアップルやグーグルに乗っ取られて良いのか、自動車メーカーがしっかりとサポートすべき場所ではないか」との考えを示した。

◆電機メーカーにEVは作れない

一方の鶴巻氏は、大人4人が乗れる超小型EV『FOMM コンセプト』の試作2号機の完成を目前に控えていることを披露した上で、「我々の車は本当に小さくて、誰にでも簡単に造れるのではないかとよく思われがち。しかし、“走る、曲がる、止まる”と、衝突安全に関しては乗り物として非常に重要だ。かつて電気自動車が世の中に出始めた頃に、電機メーカーがEVを造る時代が来るのではないかと言われたが、絶対にそれはないと思っている」と強調した。

その上で「やはり“走る、曲がる、止まる”の操安性はあるレベルを超えないと世に出せないと思っている。まもなく出来上がる試作2号機では、それがなんとか実現に近づいてきた。グーグルやアップル、電機メーカーも含めて、そういう部分までは絶対にできないと思う」と述べた。

現在開発中のFOMM コンセプトは全長2495×全幅1295×全高1550mmと1人乗り原付ミニカーと軽自動車の中間の車両サイズ。鶴巻氏によると試作2号機は「飛行機の操縦桿のような操作系にして、手を入れ替える必要のない角度でUターンできるようにした。また手でアクセル操作もするので、今までと違う感覚で乗れる」とのことだ。

◆小型EVはイノベーションのジレンマを覆すか

FOMMの話題から対談のテーマはEVの将来性に移り、中島氏は「テスラのアプローチは少し違うと思う。時速100kmに達する時間がフェラーリよりも速いというのは面白く、富裕層には受けているが、本当の意味での、“イノベーションのジレンマ”をひっくり返す役割をテスラは果たさないのではないか」との見方を示した。

“イノベーションのジレンマ”とは、飛躍的な革新をもたらす破壊的な技術の登場によって生じるもので、中島氏は「EVは航続距離が短くスピードも遅い、だから電池をいっぱい積もうというのではなく、距離もスピードもで出なくて良いことにして、その代りガソリン車よりもすごく便利というところがアピールできれば、メインフレームに対してパソコンがやったような、機能は縮小されたが、もし運びが圧倒的に楽になるという革新的役割を果たせるのではないか」と語る。

一方の鶴巻氏は「環境にお金を出す、出さないという議論があるが、まだ“EVだから買う”という人は少ないと思う。乗ってワクワクするとか、楽しいとか、運転してみたいというのがないと、多分、FOMM コンセプトのように小さくて今までにないクルマでも、何か特徴がないと、お金を出してくれないと思っている」と指摘。

さらに「テスラは高級感を出して、乗り味もすごいという所でお客さんは価値を見出して買っていると思う。FOMM コンセプトのように小さい車に対する潜在的なニーズは絶対あると思っているので、それを顕在化するために最初の取っ掛かりが必要」と、生みの苦しみをのぞかせた。

またEVの普及に欠かせないインフラに関して中島氏は「EVは電池交換方式でいいのではないか。充電ステーションに行って(電池を)入れ替えて、電気代だけ支払うような仕組みで」と提案。これに対し鶴巻氏も「全然それで構わないと思う。だからFOMMコンセプトもカセット式の電池にこだわっている」と応じた。

また鶴巻氏は「日産自動車の『リーフ』のような大きな車ではバッテリー交換式はできない。それができるのは、我々の車くらいが限界。あとはEVバイク。しかもEVバイクとは多分、バッテリーを共用化できるのではないかと思っている」とも話した。

◆自動運転、CO2排出量の考え方

対談のもうひとつのテーマが、“未来の車”についてだ。中島氏は「僕が総理大臣だったら東京オリンピックが開催される2020年から第2東名(高速道路)は自動運転のクルマしか走れないようにすると今宣言する」と、自ら“ナカジマノミクス”と名付けているアイディアを披露した。

その中身は「高速道路でドライバーが睡眠不足になりながらトラックを長距離走らせるのはどう考えてもおかしい。それを全部自動運転にすれば、トラックは時速80~100kmで、他のクルマは同200~300kmで走らせることができる。そうすればリニア新幹線がいらなくなる。高速道路で自動運転のクルマだけを走らせれば革命が起きるだろう」というもの。

さらに中島氏は一般道の車についても「実は誰も車を所有していない、必要な時だけ使う。理想形でいうと使いたい時に車が自動運転で来て、目的場所で乗り捨てると勝手にどこかに行ってくれる。配車サービス『ウーバー』の運転手無しみたいな世界になってもいいのではないか。車がインフラの一部になり、そうすればバスもいらなくなる」とも提案する。

鶴巻氏の考える未来の車は「大きさも結構重要」とした上で、「使う時にCO2を出さないというだけではなく、モノづくりの段階から商品が生涯を終えるまでに排出するCO2がどれくらいかトータルでとらえる。LCA(ライフサイクルアセスメント)という考え方も必要」と主張。

その上で「正確には計算していないが、LCAでみるとFOMMコンセプトはおそらく、トヨタ『ヴィッツ』クラスの3分の1くらいになると思う。地球温暖化を少しでも抑えるためには必ず車はダウンサイジングしなければならない。それが未来の都市につながっていくひとつの考え方だと思う」と述べた。

《小松哲也》

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