キャデラックといえば、アメリカを代表する高級車ブランド。そのキャデラックのなかでもっともベーシックな『ATS』に追加されたクーペに試乗した。
ATSクーペは4680mmの全長に1845mmの全幅というボディサイズ。BMWの『4シリーズクーペ』よりも少し全幅が広いというレベル。1800mmを超えるので、マンションの立体駐車場などでは駐車できない可能性があるサイズだが、キャデラックということを考えればかなりコンパクト。実際取り回しも悪くなく、混み合った駐車場でもストレスなく動かすことができた。
搭載されるエンジンはいわゆるダウンサイジングターボで、排気量は2リットルながらインタークーラーターボの装着によって、276馬力を発生。トルクも40.8kgmとかなり太い。組み合わされるミッションはコンベンショナルな6速AT。
低速からしっかりとトルクを発生するエンジンのフィーリングは市街地から高速道路まで扱いやすいもので、あらゆるシチューションで快適なドライビングを提供してくれるはず。アクセルに対する反応がいいのはもちろん、トルクの出方がスムーズでストレスない加速が可能。ステアリングに装備されたマグネシウム製のパドルスイッチを使い、アクティブに走ることもできる。
約1.5トンのボディは、高い剛性を持ち高性能のサスペションを見事に受け止める。フロントがストラット、リヤがマルチリンクのサスペンションには、マグネティックライドコントロールと呼ばれる可変式ダンパーを装備。路面状況に合わせて減衰力を1000分の1秒単位で変化させるほか、ドライバーの意志でSPORT、TOURを選択することも可能。ゆったりとした乗り心地も、しっかりと路面をつかむスポーツドライブもこなす。
10ウェイのパワーレザーシート(シートヒーター付き)や、ボーズのアクティブノイズキャンルシステム付き12スピーカーオーディオ、ブレンボ製フロントブレーキ、18インチのアルミホイールなどなど装備品はかなり充実。これでいて509万円という車両本体価格は絶対値では高いものの、相対値ではリーズナブルと感じてしまう。非常に残念なのは、左ハンドルしか用意されていないことと、プレミアムガソリン指定であることだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。