【MWC 2015】ネットワーク系、ふたつの注目技術「LTE-U」と「LAA」…2016年から実用化

エンターテインメント 話題
クアルコムのブース
  • クアルコムのブース
  • カテゴリ9 CAのデモ
  • カテゴリ11では256QAMに対応
  • 20MHz幅×3で理論値最大600Mbps
  • LTEとWi-FIのアグリゲーション
  • LTE側でネットワークをコントロールできる
  • LTE-U/LAAのデモ環境
  • LTE-U/LAAのデモ環境

 過去最高の動員を記録し、5日に閉幕したMobile World Congress 2015。今年のMWCにおいて、ネットワーク関連の大きなトピックとなったのが、LTEとWi-Fiのリソースをいかに効率的に使っていくかということ。通信キャリアや端末ベンダーなど複数のブースでこの部分に焦点をあてた展示を見かけた。

■カテゴリ9で450Mbps、カテゴリ11で600Mbps CAによる高速化デモ

 クアルコムブースでも、上記のトピックに関する技術・ソリューションをメインに展示していた。まずLTEのキャリアアグリゲーション(CA)関連の展示。LTE/LTE-Aでは使用できる帯域幅や変調方式によって端末カテゴリが定められており、ピークスループットもカテゴリ毎に異なっている。今回クアルコムが展示していたのは、カテゴリ9のCAで下り最大450Mbpsのピーク速度を実現するデモ。同社はカテゴリ9まで対応のチップとして、Wi-Fiルータ向けのものに加えて、スマートフォン向けのチップ「スナップドラゴン810」も開発しており、MWCで発表されたいくつかのスマートフォンにすでに採用されている。Wi-Fiルータ向けであれば、グラフィック処理等の必用がないため、チップはモデムコアとCPUのシンプルな構成にできるが、スマートフォンの場合、GPUやDSPも必要となる。それを従来のスマートフォンのフォームファクタの中で実現している点がポイントだという。

 さらにカテゴリ11対応のデモもおこなわれていた。カテゴリ11では、CAに利用できる帯域幅は20MHz×3波の合計60MHzでカテゴリ9と同じだが、変調方式が64QAMから256QAMまで対応できるようになり、ピーク速度は600Mbpsまで向上する。デモでは、実際にエリクソンのインフラにつないでの試験がおこなわれており、580Mbps前後と理論値に近い値を記録していた。まだ具体的にどのチップからカテゴリ11に対応させるかは開示されていないが、周波数のリソースを増やすことなく、変調方式の変更でスループットを向上させることができるため、日本を含めマーケットからの注目度は高いという。

■既存のAPを活用するLTEとWi-FIのアグリゲーション

 使える周波数、帯域幅が限られた中で、増加の一途を辿るデータトラフィックに対応するため、今もっとも注目が集まっているのがLTEとWi-Fi、特にアンライセンスドバンドである5GHz帯をいかに利用するかという点。今年のクアルコムブースで注目を浴びていたのが、LTEとWi-Fiのアグリゲーション技術と、5GHz帯をLTE利用するLTE-U(LAA)のデモ展示だ。

 LTEとWi-Fiのアグリゲーションは、LTEの無線基地局(eNodeB)とWi-FiのAPをつなぐことで、LTEとWi-Fi双方を通じてトラフィックを流す仕組み。LTEのネットワーク上での制御が可能なため、LTEでのCAと同様にスループットの高速化と、一方の接続が弱まってももう一方のネットワーウで補完するということができるようになる。これまでは、データのオフロード目的でWi-Fi APを設置したは良いが、ユーザーアクセスが集中するとスループットが下がってしまい、結局LTEにつないでいる方が良いということが起こっていた。この仕組みのもうひとつ大きなポイントは、既存のAPを置き換えることなく、裏側でeNodeBとの接続にさえ対応させれば利用可能になるということ。ここまでの投資を無駄にすることなく、スループット向上を図ることができる。日本でも、何万局、何十万局といったAPが設置されているが、そのリソースを有効活用できることになる。すでに韓国のKTが来年の商用化を発表するなど直近でのサービス開始がみえている。

■5GHz帯をLTEに!LTE-U/LAAが今年のネットワーク技術の目玉

 アンライセンスドバンド活用のもうひとつの取組みが、LTE-UやLAA(License Assisted Access)と呼ばれるもの。アンライセンスドバンドである5GHz帯をLTEに使い、既存のライセンスドバンドとアグリゲートして使う。ブースでは、7台の端末を用いたデモの様子が紹介されていた。7台のうち1台はWi-Fiの5GHz帯のみを掴んでいる端末で、残りの6台はLTE+Wi-Fiのピコセルにつながってアグリゲーションしている状態。その状態から、LTE+Wi-Fiの6台について、1台ずつLTE+LTE-Uに切り替えていく。つまり、あるエリア内で5GHz帯におけるLTEの利用比率を上げていくと、それぞれのスループットはどうなるのかという実験だ。

 結果から言えば、LTE+LTE-Uに切り替わった端末が増えるごとにそれぞれの端末のスループットは向上した。さらには、Wi-Fiのみにつながった端末のスループットも、5GHz帯にLTEが入ってくることで悪影響を受けるどころか向上している様子がみてとれた。当初の状態ではそれぞれの端末は10Mbps~15Mbpsのスループットを出しており、エリア内の合計値は80Mbps程度。そこから、Wi-Fiのみにつながった1台を除き6台すべてをLTE+LTE-Uに切り替えた状態では、それぞれのスループットは2倍程度上昇し、エリア内の合計値も200Mbps近くになった。

 クアルコムの担当者によれば、Wi-Fiのプロトコルはそもそも屋内などの狭いエリアで1対1の関係を想定して設計されているため、屋外で対マルチユーザーと接続するには向いていない。LTEははじめからマルチユーザーを想定した設計なので、周波数の利用効率が高く、そのため5GHz帯のLTE比率が高まることで結果的にWi-Fiで使えるリソースも増加するのだという。クアルコムが1年半ほど前にLTE-Uを提唱した時、すでに5GHz帯をWi-Fiで利用している事業者からはWi-Fi側のパフォーマンスに悪影響があるのではないか、という懸念の声が多くあがった。クアルコムとしては今回のデモ展示で、そういった懸念の声に「問題がないと回答できたはず」とする。

 LTE-U/LAAは、来年には3GPPのリリース13で標準化される見込み。米国については、法令の関係で標準化を待たずして導入が可能とのことで、ベライゾンを中心に来年の商用化に向けた動きが活発化しているそうだ。日本はリリース13の標準化待ちということになるが、ドコモとファーウェイが同技術の効果を確認したという旨のプレスリリースを既に発表するなど、導入の角度は高いように感じる。クアルコムは、上述したLTEとWi-Fiのアグリゲーション、そしてこのLTE-U/LAAについて、どういった形でネットワークが作られているかによって、ケースバイケースで適用され、共存していく技術との認識を持っている。すでにWi-FiのAPが豊富に設置されている場所であれば、LTEとのアグリゲーションで単純にスループットを上げられるし、スモールセルが多数展開している場所にはLTE-U/LAAが効果的だ。

 日本では、2020年のオリンピックに向けたフリーWi-Fiの整備なども進んでいるが、ただいたずらにAPを設置していくだけでは干渉も起きるし、満足に使えるネットワークを形成することが難しい。アンライセンスドバンドの活用も含め、限られたリソースをいかにコントロールし、効果を最大化していくのかという技術に今後はかなりの注目が集まるだろう。

【MWC 2015 Vol.75】5GHz帯を使い込む!今年のネットワーク系技術の目玉「LTE-U」

《白石 雄太@RBB TODAY》

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