IIJ、2016年「電力小売り自由化」へ向け事業者向けビジネスに参入

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IIJ代表取締役会長 鈴木幸一氏:通信事業開放の時に似ているが、法律など違いも大きいと
  • IIJ代表取締役会長 鈴木幸一氏:通信事業開放の時に似ているが、法律など違いも大きいと
  • SEILをベースにWi-SUNドングルでスマートメーターと通信
  • 電力の見える化画面の例
  • PMSサービスプラットフォーム発表会
  • PMSサービスプラットフォーム発表会
  • Bルートのデータを小売り事業者やサービスプロバイダに提供するプラットフォーム
  • PMSサービスプラットフォーム発表会
  • PMSサービスプラットフォーム発表会

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は19日、新電力事業に関する新しいサービスビジネスを開始すると発表を行った。発表会の席では、同社代表取締役会長 鈴木幸一氏が参入の意気込みや過去の通信事業との類似点・相違点などを語った。

 IIJが発表したのは「PMSサービスプラットフォーム」と呼ばれるもので、2016年に完全自由化がされる電力事業を見据えた、スマートメーターを活用したサービス基盤だ。このサービス基盤は、スマートメーターとWi-SUN規格で通信するUSBドングルを接続したWi-Fiルーター(SA-W1)と、そのルーターをリモートで集中管理するシステム(SACM:Service Adaptor Control Manager)、そしてスマートメーターからルーターを経由して送られてくるデータを蓄積・管理するクラウドシステム(PMS)の3つのコンポーネントから構成される。

 需要家ごとのスマートメーターをネットワーク化し、収集したデータでデマンドコントロールや各種サービスを実現するというモデルは、これまでのスマートグリッドやスマートシティの各種実証実験で提案、検証されてきたシステムだ。その意味でPMSサービスプラットフォームに特別斬新なテクノロジーが投入されたわけではない。しかし、このシステムが業界において新しい意味を持つのは、主に次の2つの点があるからといえる。

■需要家と供給側向けのオープンなクラウドサービスプラットフォーム

 ひとつは、このサービス基盤をIIJというISP(インターネットサービスプロバイダ)が構築、提供するという点だ。もうひとつは「Bルート」と呼ばれる、需要家と電力小売り事業者(または各種サービスプロバイダ、アプリケーションプロバイダ)向けのオープンなクラウドサービスプラットフォームであることだろう。

 これまでの実証実験などは、実験向けの閉じた世界でのスマートグリッドの実装がほとんどだった。これは、実験であることと電力事業が完全にオープンになっておらず、発電・送配電・小売りまでいわゆる電力会社1社がカバーしていたためだが、IIJのサービスは電力事業の自由化により、小売りや送配電も分離され、複数の事業者が競争ビジネスを展開する前提で設計されたサービスだ。

 IIJといえば1992年設立で国内初のインターネット接続サービス会社といわれている老舗ISPだ。通信の自由化に伴い、いち早くインターネット市場に参入した同社が、電力事業の自由化に際して、新たな事業展開を発表したことは象徴的でもある。

 発表会で鈴木幸一会長は、「M2Mのプラットフォームではエリクソンが市場展開しているものがあるが、日本国内ではおそらくこのPMSサービスプラットフォームが初めてのものとなるだろう。リスクは当然あるが、電力に限らずガスや水道なども統合できるサービスプラットフォームとして新しいインフラのしくみを作っていきたい」と新事業の抱負を語っていた。

 IIJでは、2015年度はトライアル提供期間とし、PMSサービスプラットフォームを、主に小売りを行う新電力事業会社に無償で提供するとしている。トライアル期間でシステムの完成度を上げ、具体的なサービス開発を行っていくという。2016年度に正式サービスとして、デマンドレスポンスを含む各種のサービスをビジネス展開する。2017年度以降は課金代行、HEMSシステム連携、ビッグデータ解析と応用範囲を広げるというロードマップを描いている。

■IIJの取り組みが新電力市場を活性化

 今年は電力の小売りが一般家庭にも開放される予定だが、自前でクラウドインフラや通信回線を持たない事業者は容易な参入がしにくい。現状でも工場やビル・マンションなどを対象とした新電力小売り会社が、電力の見える化、HEMS連携などの付加価値ビジネス、デマンドコントロールなどを提供しているが、これらの会社は、独自にクラウドやネットワークを持っている。

 大口需要家であれば、インフラ投資が必要でも参入意義はあるが、個別の需要家向けのビジネスとなるとインフラまではなかなか自前で用意できない。しかし、PMSサービスプラットフォームのようなしくみを使えば、契約数に応じたサーバーや回線の動的な利用契約が可能になるかもしれない。新電力市場の刺激になることは間違いない。

 PMSサービスプラットフォームは、当面は電力小売り事業者向けのビジネスとして考えているとのことだが、将来的には、IIJのISP事業との連携(例えば、小売り会社の契約とインターネット接続やモバイル回線の契約をセットにするなどが考えられる)も考えたいとしている。東京電力は通信事業から撤退しているが、地方の電力会社は地域に根付いた通信事業を続けている。新電力ビジネスは、通信事業を巻き込む形で新しいステージを迎えている。

通信事業者「IIJ」の参入で活性化する新電力市場

《中尾真二@RBB TODAY》

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