〈ライター紹介〉
名前の一文字に「照」があるのでビジネスでは通称テリー。バンコクとシンガポールを拠点に世界中を駆け回る石油商。訪問目的によって超バジェットホテルからハイパーラグジュアリーホテルまで滞在歴多数。
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和食の魅力は非常に幅広く語られることが多い。素材の持ち味を生かす、出汁の概念、美しい盛り付け、食器取扱いの作法、食事に合う様々な酒類、と語りだすときりがない。バンコクでは特にこの5年ほどで和食店が爆発的に増え日常的にも和食の魅力を発揮しているレベルの高い食事を楽しめるようになった。その中でも様々なシチュエーションにも対応できビジネスユースとしての検討要素も多い、という和食処は数が絞られてくる。
□個室
日本人ビジネスマンに好まれる和食処の一つに「和食堂・山里」がある。自分のビジネスでもよく使う店の一つだ。好む理由の一つとして窓が大きくて天井の高い個室があること。経験上、少ない人数であっても広めで天井が高く開放感がある部屋だとお互いに口から出る言葉もスムーズかつとげのないものが多い。ピリピリしながらの食事、というのも少なくない中で部屋へ案内した時に「おお、なかなか落ち着けるじゃないか」と言ってもらえるとまずこちらも安心だ。
□寿司カウンター
価格交渉を主とした商談や部下もつれての議論混じりの会食は個室を必要とするが、商談が終わり友人として食事を共にする、という時にも山里の寿司カウンターが人気だ。白と木目を基調とした内装はとある外国人のVIPに「神社をイメージしているのか」と質問された。粛々とした静謐な作りはそうなのかもしれない。そしてここでも天井が高い。その贅沢な空間は大声で笑いながらあれこれ話すというより、ビジネスを通じて知りあったとしても共通する世界観や自分達の生きざまといった「話すにも静かに心が落ち着ける場が必要」という会話にも十分耐えうる貴重な店構えだ。もちろん素敵な女性と知り合ってもっとよく相手を知りたい、ゆっくり話してみたい、という時にも実力を発揮するだろう。女性はもともと話が好きだが、表面的な日常会話でなく人生観や信念などを聞いてみたいときは自分でもそういう質問がしやすい雰囲気、相手もさらりと口に出せる空間、というのがうまく会話を引き出すエッセンスの一つともなる。
□鉄板焼きコーナー
エンターテイメントを含んだ和食として世界中で人気の高い鉄板焼き。あまり和食にご縁のない人たちに用意すると確実に喜ばれるのでよく利用するメニューの一つでもある。山里の鉄板焼きを以前頂いたが、日本人料理長からスタッフへ「余熱で調理が進むことも含める」といった細やかな指導しており和牛の特長である口に広がるジューシーさが楽しめるステーキ、熱は通っているけどウエルダンにはなってないことでより甘味が引き出され深い味わいを満喫できる北海道産ホタテ、といった扱いに繊細なテクニックが必要な食材もベストタイミングで出て来た。世界中で鉄板焼きを食べてきたがやはり多くはちゃちゃっと炒めた見様見真似というのが事実の中で山里はそれらがとても追いつけないレベルを維持しているのを実感できる。
□会席コース
ビジネス会食では計算機をたたいて議論が白熱するというような細かい話まではあまりないにしろ、食事は一度頼んだら最後まで勝手に出て来てほしいのが本音。和食堂・山里ではバジェットに合わせて数種類のコースがあり今回は店の名前を冠している『山里会席』という月替わりのコースメニュー(4,500バーツ++)をお願いした。
まずは全体像から。(編集部注:写真およびメニューは取材時のもの)
突き出し、小吸い物、おつくりからご紹介。
刺身はおいしいものをいただくと本当に繊細な料理だと心から実感する。鮮度、素材の味を生かす、捌きの技法、取り合わせ、盛り付け、他あらゆる和食の基礎技術の結集であり食文化の高さがあってこそ成り立つものだ。この刺身をつまみながらそんな話で軽く会話をスタートするのもいいかもしれない。
突き出しは黄身酢と合ったので酸味が苦手な身としてはちょっと恐る恐るではあったが酸っぱくなくカニの身とよく合っていた。
吸い物に至ってはタラの真丈もぷりぷりで美味だがなんといってもごく薄味なのに出汁がきちんと効いていて最後の一滴まで舐めるようにして完食してしまった。出汁の概念はたとえばヨーロッパならフォンドボーという形であるにしろ、和食であれば時には素材に影響しないものを、時には素材をさらに引き立てるものを、というようなのような無限のバリエーションから使いこなすのとはまた違うため、和食堂・山里でまた和食の出汁技術の素晴らしさを体感した。
和食堂・山里でいつも外国人VIPにも好評なのが煮物。寿司刺身や鉄板焼きといったメジャー和食に比べて知名度もなく見た目も地味、「これは何だ」と言われながらつつかれることの多い煮物だが、食べてみると一転「これは旨い!」と間違いなく言ってもらえ、箸だと煮汁が食べられないので匙で全部掬って食べたい、匙をもらってくれ、と言われる隠れた実力者。今回はサバの味噌煮と一見極々よくあるメニューだが高度な下処理済みでサバ特有の残り香や身から出る濁りもなく自分でも匙で掬って全部食べてしまった。場が場なら白いご飯を投入して器についている煮汁をも全部吸わせて食べたいところだった。
そして最近はタイ人のお客さんからもリクエストの多い和牛ステーキ。以前は文化的宗教的背景から牛肉を忌避していたが近頃では好んで食べる人たちがかなり増えてきている。会席のメニューに入っていれば別途注文はとりあえず待ってもいいし、和食堂・山里であれば牛肉を食べない人たちのために天ぷらもチョイスできるようになっている。和牛はステーキとしてはサシが入りすぎると脂っぽくなりすぎるため適度に赤身を保つ方が良いと思っているが、和食堂・山里でももちろん最適な和牛だった。そして和食の「おいしいものを少しづつ」という真髄をつくこの適量がまた胃もたれもせず好感だ。
会席を注文した場合、一皿取っておくと何かと手間がかからず見た目も豪華でもてなしの気持ちも表せるという便利なメニューが寿司盛り合わせ。
意外にも外国のVIPが最初に手を付けるのは卵焼き。刺身やすしを見慣れていなくどれがどういう味がするのかわからない中で唯一絶対に間違いがないのはこれ、という確信が持てるからなのか。どういう言語を話す人たちであっても卵焼きに書いてある「山里」が読めればを各発音で読みながら食べるのも山里の個人的風物詩の一つだ。
刺身に興味はあるけどどうしても生のままでは苦手感がある、という人にはゴマベースのドレッシングで刺身を洋風に昇華させた刺身サラダもおすすめしたい。
最後はデザート。柿プリンとフルーツ盛り合わせに玉露で素晴らしいコースを締めくくる。最後まで楽しめるコースだ。
□山里の朝食を楽しむ
日本各地から出発する夜行便がバンコクの朝5:00-6:00の間に到着するようになり日本人ビジネスマンの出張スケジュールも一層タイトになっている昨今、到着後すぐ市内へ移動し朝食を食べ9:00から出社なんてことも多いようだ。和食堂・山里であれば、朝食だけの利用も可。(850バーツ++)朝食付き宿泊であれば和食またはインターナショナルビュッフェのどちらかが選べる。ここでもやはり煮物の小鉢がよく口に合った。さりげないサイドメニューにまで手をかけていることに喜びを感じながら久しぶりの和朝食を堪能した。
夕食接待、早朝到着出張者の朝食、ともに強い味方になるOkura Prestige BANGKOKの和食堂・山里、ビジネスにぐっと役立ててほしい。
The Okura Prestige Bangkok
日本語表記- オークラ プレステージバンコク
住所
Park Ventures Ecoplex, 57 Wireless Road, Bangkok 10330 Thailand
BTSプルンチット駅直結、パークベンチャーエコプレックス内のホテル通用路より、24階がレセプション。自動車の場合はワイヤレスロード側に出入り口。
電話
02-687-9000