ラブルパイル小惑星にヤモリの足と同じ力…潜在的な地球衝突の危険も判明

宇宙 科学
地球に衝突する可能性も指摘されている小惑星 1950 DA
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  • 地球に衝突する可能性も指摘されている小惑星 1950 DA

米テネシー大学の研究チームは、小惑星イトカワと同じがれきが集合したタイプの小惑星「1950 DA」が重力・摩擦力に加え、ファンデルワールス力と呼ばれる結合力で凝集しているとの観測結果を発表した。

テネシー大学の研究者が2014年8月13日付の英科学誌ネイチャーに発表した論文「Cohesive forces prevent the rotational breakup of rubble-pile asteroid (29075) 1950 DA」によれば、2880年に地球に接近する小惑星1950 DAを観測し、この小惑星が2.12時間と非常に高速に自転していることを確認した。

幅1.3キロメートルの地球近傍小惑星 1950 DAは、過去に天体同士が衝突した際の破片がゆるやかに寄り集まった、ラブルパイルと呼ばれる密度の低いタイプの小惑星であることがわかっている。その自転速度は、そのサイズと密度の小惑星に働く重力と摩擦力を越えて岩石片をバラバラに飛び散らせしまうほど速く、なんらかの別の結合力が働いていることが考えられる。論文筆頭著者のBen Rozitis博士らは、その力をヤモリの足を壁に吸着させているのと同じ分子間結合力、ファンデルワールス力であると結論づけた。小惑星に働くファンデルワールス力は、月の表土(レゴリス)に働く同じ力よりもやや弱いという。

ラブルパイル小惑星にもファンデルワールス力が作用していることは、2013年と2014年にハッブル宇宙望遠鏡が観測した小惑星P/2013 R3の例から予見されていた。この小惑星は、2度の観測の間に隕石との衝突でバラバラになり、再度凝集したものだという。

1950 DAの観測から小惑星に働くファンデルワールスが初めて確認された。しかし、潜在的な小惑星の地球衝突の危険を防ぐ観点からいえば、よりやっかいなことが明らかになっている。Rozitis博士は「微弱な結合力がひとつの小惑星を形作っているため、ごく小さな衝撃が完全な分裂を引き起こすのです」という。これまで、地球に衝突する軌道をもつ小惑星が見つかった場合は、キネティック・インパクター(衝突器)をぶつけて軌道をそらす方法が検討されていた。しかしラブルパイル小惑星にこの方法を取ると、小惑星はバラバラの破片となって地球に衝突することが考えられる。小惑星 1950 DAは2880年の地球接近の際に衝突する可能性が低くないとも考えられており、小惑星の結合を崩さずに軌道を変更する方法を検討する必要があるという。

《秋山 文野》

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