【インタビュー】ダッソー・システムズ 船舶・海洋部門副社長「日本は潜在性の高い市場」

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ダッソー・システムズ 船舶・海洋部門 アラン・オワール副社長
  • ダッソー・システムズ 船舶・海洋部門 アラン・オワール副社長
  • オン・タイム・トゥー・シー
  • デザイン・フォー・シー
  • 船舶・海洋業界向けの7つのソリューション

フランスの航空機メーカー「ダッソー」グループのCADソリューション部門が1981年に独立して設立されたダッソー・システムズだ。

同社の2013年における同社の売上げは約20億6610万ユーロ(約2900億円)。そのうち自動車・輸送機械が29%、産業機械が19%、航空宇宙・防衛が14%、ビジネスサービスが12%、船舶・海洋とその他のインダストリーを併せて26%を占めている。

自動車分野が第1位の収益の柱になっているのが同社の現状だが、今後の成長分野として期待しているのが船舶・海洋部門だ。同社では、同部門向けのソリューションビジネスを強化していくことを明らかにしており、日本の造船関連業にも積極的な売り込みを図ることを目論んでいる。

今回、船舶・海洋部門のアラン・オワール副社長がレスポンスの単独インタビューに応じ、日本の船舶・海洋業界について「非常に有望かつ潜在性の高い市場」とした上で、「統合ソリューション価値提案ができる」との考えを示した。

◆プロジェクト管理から就航までの全体プロセスをカバー

----:ダッソー・システムズが船舶・海洋業界に進出した経緯は。

オワール氏(以下敬称略):設立翌年の1982年には、ゼネラル・ダイナミクス社とのプロジェクトが始まり、アメリカ海軍の潜水艦でソリューションを使っていただきました。我々のソフトウェアを潜水艦の中に搭載し、実際のメインテナンスに使われた。82~05年の間は順調に成長を続け、基本的には艦船向けのソリューションを提供してきた。05年に一連の艦船向けソリューションの開発が完了したことを受け、それ以降は商船向けソリューションの開発に着手した。

----:船舶・海洋業界向けソリューションはどのようなものがあるのか。

オワール:船舶・海洋業界向けには7つのソリューションを提供する予定になっている。これは最初のプロジェクト管理から始まりデザイン、設計、組み立て、艤装などの各工程および最後は船が航海をするところまでを全体的にカバーしている。

たとえば『オン・タイム・トゥー・シー』は、何千人もの人々がかかわる船舶・海洋業界のプロジェクトにおいてスケジュール通りにプロジェクトを推進してもらうことを目的としたソリューション。プロジェクトに関連する契約書の管理を始め、プロジェクト中に作成されるすべての電子書類の管理、サプライヤーとのデータのやり取りのサポート。様々な3Dデータが協力会社から提出されるので、それを統合するサポートも行う。

また『デザイン・フォー・シー』は基本設計を行うソリューションで、基本的な船の構造部分、複合材への対応、配管、空調システム、それから区画設計は一番時間をかける部分で窓や階段の配置など、これらの要素を組み合わせて船の設計を進める。

◆グローバルの複数企業に採用例

---:そうしたソリューションはどのような顧客に使われていますか

オワール:船舶・海洋とひと口にいっても様々なセグメント分けができるので、そのセグメントごとに対応することが重要であると考えている。我々がとらえているセグメントとしては、まず艦船、それに商船、海洋構造物、ヨットおよび作業船、それからデザインなど専門分野に特化したもの、さらにサプライヤー向けもある。

海洋構造物では2000人規模のプロジェクトマネジメントのソリューソンをケッペルにお使い頂いている。また現代重工業からも海洋構造物のプロジェクト管理のソリューションとして『オン・タイム・トゥー・シー』を選定していただいた。クルーズ船で世界トップのマイヤー・ヴェルフトにお使い頂いている。日本ではジャパンマリンユナイテッド、三菱重工業、川崎重工業にお使いいただいている。

国際ヨットレースのアメリカズカップで優勝したオラクル・チームUSAの艇も我々のソリューションを使って製造された。我々としても非常にうれしい結果になったが、同時にこうした非常に複雑な艇を造る際に我々のソリューションの良さを生かして頂けるというひとつの証拠になったと考えている。

◆エネルギー需要をテコにして運搬船の建造が伸びる

---:日本の船舶・海洋業界の市場性をどう考えているか

オワール:非常に有望かつ潜在性の高い市場と考えている。やはり船舶・海洋業界で(中国・韓国に並ぶ)3大国のひとつでもあるし、商船だけでなく艦船も手掛けているし、今後はエネルギー需要をテコにして運搬船の建造が伸びるとみている。

我々が日本の造船業界に提案できると考えているのが統合ソリューション。データを造る側は、船殻、偽装、プロジェクト管理、シミュレーションなどすべて単体のツールを使っているのが実情だと思うので、それらを統合したソリューションで価値提案ができると考えている。

●オン・タイム・トゥ・シー

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《小松哲也》

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