ロッキードマーチン商業打ち上げサービス 業界初の"全額払戻・再打上"プログラムを発表

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2014年3月14日、ロッキードマーチン商業打ち上げサービス(LMCLS)社は、業界初で唯一の100パーセント打ち上げ"払戻・再打上"プログラムを導入したと発表した。同社の運用する『Atlas V(アトラス5)』ロケットの打ち上げ失敗に対し全額返還、または再打ち上げに対応する。

LOMCLS社は、ロッキードマーチンの子会社で大型ロケット「アトラス5」、小型ロケット「アテナ」の商業衛星打ち上げサービスを提供している。「Refund Or Reflight(払戻・再打上)」プログラムは、ロッキードマーチンの全額出資補助によるもので、NASAや国防総省など米政府系打ち上げ以外のすべての商用打ち上げサービスに適用される。打ち上げの際、部分的に不具合が起きた場合の部分的払い戻しにも応じるという。

払戻・再打上プログラムは、今後のLMCLS社の打ち上げサービス契約で標準として含まれるため、人工衛星の事業者は打ち上げにあたってコストと時間がかかる宇宙保険の契約を別に準備する必要がなくなるという点が同社の説明するメリットだ。

LMCLS ロバート・クリーブ社長は「われわれの顧客は、最高のサービスを望んでおり、100パーセントのミッション成功以外は受け入れません。アトラスは、信頼性と機能では並ぶもののないロケットですが、同プログラムを追加することで顧客に完全にご安心頂けるようになります」とコメントしている。

アトラスVロケットは、2002年の初打ち上げ以来43回の打ち上げ中、2007年にNRLO衛星ミッションでロケット上段の燃焼時間が予定より短く、衛星の投入高度が低くなった以外はすべて打ち上げを予定通り成功させている。成功率は97パーセントを越える信頼性の高いロケットだ。NASAの火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービター、マーズ・サイエンス・ラボラトリー(火星ローバー キュリオシティを搭載)といった科学衛星から、データ中継衛星TDRSシリーズなどの実用衛星、防衛衛星NROL打ち上げミッション、GPS衛星といった国防関連衛星などの打ち上げを担ってきた。

しかし、アトラスの打ち上げコストはかなり高額であるといわれる。アトラス5 401形態でのNASAとの契約額は、1998年当初の7200万ドルから2013年の火星探査機MAVEN打ち上げでの1億8700万ドルまで増加。今後の新規契約では2億ドルを越えるとの推計がある。商業打ち上げサービスでは、政府系と契約の形態が異なるためこれよりもコストは低いが、衛星1機あたり5650万ドルのコストを打ち出しているスペースX社のファルコン9ロケットの2倍を越える。ロッキードマーチン社は、打ち上げ保障制度を用意することで、ロケット価格に保険を加えたトータルコスト、打ち上げ準備の時間などの面でのアトラスロケットの優位性を打ち出していくものと考えられる。

《秋山 文野》

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