トヨタ自動車は3月11日、東京都江東区の車両イベント施設「MEGA WEB」で新型『ノア』および『ヴォクシー』を中心とした福祉車両(ウェルキャブ)の取材会を開き、新モデルの機能向上やコスト低減への取り組みなど説明した。
ノア&ヴォクシーは同社の福祉車両では中核的な存在となっており、今回の全面改良でも障害者が運転する機種を含め、それぞれ単一車種では最多の6タイプが設定された。同社の調べでは福祉車両の購入を見送る理由で最も多いのは「価格」であり、複数回答の半数を占める。このため、製品企画本部でウェルキャブを担当する中川茂主査は、新モデルへの切り替えを機に「機能向上とともにコスト低減にも力点を置いた」という。
とりわけ、バックドア部から車いすやストレッチャー(移動式ベッド)を乗り入れることのできる「スロープ車」は車体溶接工程で通常の車両と同じラインを流せる「インライン生産」を実現したという。スロープ車は車体後部が大きく異なるため、「プラットフォーム(車台)を一部手直しすることで、量産ラインでも溶接できるようにした」(中川主査)。インライン生産は、2005年に始めた『ラクティス』のウェルキャブ以来という。
こうした措置により福祉車両の追加的な工程を極力削減、車いすが1客搭載できるタイプでは、ベース車両との価格差を59万8000円とした。これは旧モデルの価格差に比べ約2割の圧縮となっている。トヨタはここ数年、国内で年1万8000台前後の福祉車両をコンスタントに販売しており、シェア(登録車市場)は約7割。中川主査は「日本は超高齢化時代に入っており、ご家庭で普通のクルマとして使っていただけるという視点を重視して開発に取り組みたい」と話している。