横幅2000mm。このところ、衝突安全だナンだと横幅が大きなクルマは増えているけれど、やはり2000mmと言われるとぐっとくる。
目の前の『エクスプローラー』と対峙すると、いまからこのクルマに乗るのかと気合を入れざるを得ない。しかも、左ハンドルだし。運転席に座っても緊張感が続く。都内で走らせていたらいつどこにぶつけるか、ひやひやなのだ。
けれど、小一時間ほど都内を走らせ、高速道路に乗ったとたんに気分は一変する。なんと気持ちのいいことか!あたりまえだが、大きいは、広いなのである。助手席に座っている人は遠いし、4人乗っていても、圧迫感ゼロ。やはり改めてロングを走るとその実感が強烈に押し寄せる。
雪のエリアに向かう4WDに積まれたエンジンは、V6の3.5リットル。アクセルを踏み込むと心地よく耳に届く彷徨とともに、巨体をものともしないトルクが全身を包む。サスペンションがやわらかくても、ゆるいわけではない。しなやかで、懐が深く、乗っている人間に緊張をさせないおだやかさがあるのだ。これだけのサイズ、燃費はお世辞にもいいとは言えない。でも、だからどうしたとすら思う。この快適さ。この心地よさ。新幹線での移動で快適空間の求めたときにグリーン車の追加料金を払うように、これだけの快適な空間であれば、かかった燃料代はグリーン代、いや、グランクラス代として考えれば十二分なほどにモトがとれるではないか。
3列シートは、スイッチひとつで電動で格納が可能。荷物の大きさや量に応じて、凹凸のあるラゲッジスペースをうまく活用すれば、ワインディングで荷物が動くこともない。サイドビューカメラや、リアビューカメラなどの安全装備や、シートやステアリングヒーターといった快適装備など、アメリカの大自然のなかで遊び倒した末に培ってきた技術や装備がしっかり装着されていて、そのありがたさや使いやすさを実感するたびに、気持ちがどんどんアクティブになっていく。
試乗の直前、びびった自分はどこに行ったのだろう。500kmの雪道ロングドライブを終えて都心にもどると、巨体をぐいぐい動かしながら縦列駐車を決めている自分がいる。大きなものを動かすときに得る、ほどよい快感が押し寄せる。クルマは人を成長させる。このクルマは技術だけでなく、精神的にも成長させてくれる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。