準惑星ケレスに水蒸気を確認 ハーシェル宇宙望遠鏡が観測

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準惑星ケレスのイメージ
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2014年1月22日、ESA 欧州宇宙機関は、ハーシェル宇宙望遠鏡による観測で、火星と木星の間の小惑星帯に位置する準惑星『Ceres(ケレス)』表面に水蒸気の柱を確認したと発表した。

ケレスは、火星と木星の間のメインベルトと呼ばれる小惑星帯に存在する、直径950キロメートルの天体。メインベルトの中では最も大きい球形の天体で、2006年に国際天文連合はケレスを小惑星よりは大きく、惑星よりは小さい「準惑星(Dwarf Planet:ドワーフ プラネット)」と分類した。

ケレスは岩石質の中心を厚い氷の層が覆っていると考えられており、氷(水)の存在が太陽系の形成に大きな影響を与えたと考えられれている。46億年前の太陽系初期には、水星、金星、地球、火星など太陽系の中心の惑星に水が集まって存在するには暑すぎ、さらに後の39億年前に続いた彗星や小惑星の衝突で水がもたらされたという。

彗星は水を含んでいることが知られているが、小惑星での水の存在を示す、彗星のような活動はこれまで明確に確認されていなかった。今回、ハーシェル宇宙望遠鏡のHIFI 遠赤外線分光器による観測データから、ケレスの氷の表面から水蒸気の柱が噴出していることが確認された。ハーシェル宇宙望遠鏡は、2013年4月に冷却材の枯渇のため運用を終了しているが、それまでに11の小惑星と彗星をターゲットとした「MACH-11」プログラムで2011年11月から2013年3月までの間、4回にわたってケレスの水の存在を確認する観測を行った。
「ケレスに氷の表面と大気が存在する裏付けが得られたことで、アステロイドベルトの天体で明らかな水蒸気が発見された最初の例になりました」とネイチャーに発表された論文の主執筆者であるESAのマイケル・カッパースはコメントしている。

ケレスの自転周期は9時間で、水蒸気が噴出する源はケレス表面に2か所存在している。氷を水蒸気にする熱源はまだ判明しておらず、ひとつは太陽の熱によると考えられる。60キロメートルほどの幅の2か所は他の場所より輝度にして5パーセントほど暗く、太陽の熱でより早く温められる。氷が太陽に温められると、昇華して水蒸気となり、表面のちりと共に噴きだすというものだ。噴出する水蒸気は1秒当たり6キログラムだという。もう一つ考えられる原因として、ケレス内部で放射性物質の崩壊による熱が発生し、間欠泉、氷の火山活動を引き起こしている可能性も考えられている。

今回、観測されたケレス表面の現象を、2015年春にケレスに到着する予定のNASAの小惑星探査機『Dawn(ドーン)』が詳しく観測する予定となっている。ケレスに大量に水が存在する理由の解明など、さらなる成果に期待が集まっている。

ハーシェル宇宙望遠鏡のゴラン・ピルブラット主任研究員は「ケレスからの水蒸気の柱の噴出を確認したことで、太陽系での水の分散に関する新しい情報が得られました。セレスは小惑星帯の全質量の5分の1にあたると考えられており、今回の発見は太陽系の小天体に関する知見だけでなく、地球の水の起源を解き明かす上でも大変重要なのです」とコメントしている。

《秋山 文野》

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