マレーシアで、「神」を表す語として非イスラム教徒が「アラー」を使用することは認められないとする控訴審判決が出た。
しかし、問題の発端となったキリスト教系週刊誌「ヘラルド」編集のローレンス・アンドリュー神父が12月27日にインターネット上で、セランゴール州で行うマレー語の礼拝で「アラー」を使用すると宣言し、再び混乱が広がっている。
1月2日にはセランゴール州イスラム宗教局が警察官とともにペタリンジャヤにあるマレーシア聖書協会から300冊以上のマレー語とイバン語版の聖書を押収した。セランゴール州スルタンのシャラフディン・イドリス氏も州内で非イスラム教徒は「アラー」との表現を使用してはならないとの命令を発していたが州内でマレー語版の聖書で「アラー」が使用され続けていた。
セランゴール州の与党・統一マレー国民組織(UMNO)は3日、ローレンス神父が「アラー」を使用したことについて謝罪しなければ、5日にも教会の前で抗議を行うと発表したが4日には、宗教の自由を乱すとしてイスラム教系の非政府組織(NGO)などに対して抗議を行わないよう呼びかけた。
ヒシャムディン・フセイン国防相は、裁判所の判決を受け入れ論争を止めるように呼びかけた。
問題の発端は、カトリック教会が2008年に機関誌で神を「アラー」と表現したことで、内務省が「アラー」の使用を禁止したことから教会が提訴。いったんは高裁で勝訴していたが、昨年、控訴裁で逆転敗訴した。判決の解釈をめぐって政府内でも意見の不一致があり、混乱、論争が続いている。
(ストレーツ・タイムズ、1月5日、ベルナマ通信、1月4日、ザ・サン、1月2-4日)