【ホンダ 超小型モビリティ 試乗】アンダー軽の新カテゴリーはミニマムトランスポーターにしかならないのか

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ホンダ・MC-β
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  • ホンダ・MC-β(ホンダミーティング13)
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ホンダが19日に発表した超小型モビリティEV『MC-β(ベータ)』。運転者と同乗者が前後に乗るタンデム2シーターパッケージで、モーター出力は定格6kW、最大11kW、最高速度70km/h以上、1充電あたりの航続距離80km以上という公称スペックを持つ。


◆市販化を意識した仕立てに変更、デザインのインパクトは減

昨年、ホンダは別の超小型EVのプロトタイプを公開していた。そのモデルにはヨーロッパの超小型モビリティ規格に合わせて出力15kWのモーターを搭載していたのだが、今回はモータースペックを落としてきた。国土交通省が考えている超小型モビリティの規格に合わせてきたものと考えられる。

外観上の特徴として目立つのは、ヘッドランプやリアコンビネーションランプを安価なバルブ式に変えるなど、市販化を意識した仕立てとなったこと。「軽自動車より大幅に安くなければ超小型モビリティの意味がない。バッテリーリース方式などの工夫で70万円以下にならないかと思っている」(本田技術研究所 スマートモビリティ開発室室長・山藤靖之氏)という低価格化へのチャレンジのなかでこのような仕様になったのであろう。デザインから受けるインパクトは昨年のプロトタイプに比べて大幅に薄まり、どこにでもありそうな普通の超小型車になってしまったのは、やや残念なところだ。


◆行動半径20km程度のミニマムトランスポーター

その超小型モビリティに短時間ながら試乗してみた。ボタン式シフトをドライブに入れてアクセルを踏むと、ウィーンというモーターのうなり音を響かせて発進する。そのノイズレベル自体は決して大きくはないのだが、デフロスター(くもり取り装置)なしのクルマはクローズドドアをつけられないという国交省の法規に準拠するため開放式になったキャビンには遠慮なく音が侵入してくる。

加速力は必要十分。出力15kWのプロトタイプは思った以上に速くて楽しいと感じさせるくらいのアジリティを持っていたのだが、MC-βはタウンスピードならこれでいいかなというレベルへと大きく後退した。パワステなど操作補助システムは装備されていない。そもそもタイヤ幅が細いため、パワステがなくても困りはしないのだが、筋力の落ちたお年寄りの方だと、据え切りなど抵抗の大きなときには重く感じるかもしれない。

このMC-βは、国交省の考えるアンダー軽自動車の新カテゴリーの未来を示している。定格出力6kW、窓なしという仕様はほぼ確定といったところだろう。航続距離は公称80km、実測だと1名乗車で60km程度であろうか。平均車速20km/hとして、このクルマに3時間乗り続けるのは正直、苦行に近いものがあろう。行動半径20km程度のミニマムトランスポーターと考えたほうがよさそうだ。

ホンダは何にでもドライビングプレジャーを盛り込みたがる特質を有しているが、そのホンダ製超小型モビリティがこの程度のものに落ち着かざるを得ないということは、超小型モビリティはコンパクトならではの移動の楽しさを持った乗り物になることはなく、ただのミニマムトランスポーターになる公算がいよいよ大となった。


◆せめて欧州L7カテゴリーと同水準の規格を提唱すべし

もともと政府にとって超小型モビリティは、軽自動車増税を求めるさいのガス抜きというくらいの存在でしかない。その商品力が高くなって、ユーザーが「いつも一人で乗るのだから超小型モビリティでいいや」とばかりに流れてしまっては、軽の増税の意味がなくなってしまう。

実際、こと小型車に対して異常なほどの創意工夫力を発揮する日本の自動車メーカーなら、スペックがちょっと緩ければそんなものを作りかねない。そうならないよう、出力やサイズなどの要件を極力厳しくして伸びしろを持たせないという意図が透けて見える。もしこのレベルの超小型車規格の創設をもって軽増税の見返りとするならば、許容出来る税額はせいぜい年2000円程度というのが個人的な実感だ。

今から自動車業界が超小型モビリティの規格策定で巻き返しを図るのは難しいかもしれないが、せめて欧州のL7カテゴリー(最大出力15kW以下)と同水準の規格にするよう、日本自動車工業会は圧力をかけるべきだ。このところ自工会は自動車行政に対して有効な提言がまるでできておらず、東京モーターショーのようなイベントにうつつを抜かすだけの組織に成り下がっているだけに、ここらへんで存在感を見せつけていただきたいところだ。
《井元康一郎》

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