【ダイハツ タント 試乗】軽に留まらない、広い世界を見据える…森口将之

試乗記 国産車
ダイハツ タント
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すごいクルマが出たものだ。旧型『タント』がピラーレスのスライドドアとともに登場したときも驚いたが、新型の衝撃はそれ以上だ。

普通のクルマの進化とは逆に、Aピラーを旧型より立て、その状況で空力特性を高めるべく、ウインドスクリーンの曲率を限界まで高めた。さらに両側スライドドアによる重量増に対処して、フェンダーのみならずエンジンフードやリアゲートにも樹脂パネルを導入。熱的に厳しいエンジンフードは異なる素材を表裏で使い分けるという凝った構造だ。

ここまで攻めた設計の軽自動車は最近珍しい。燃費一辺倒というわけではない。走りも悪くないのだ。

自然吸気エンジンでも不満なく加速するし、静粛性の高さは驚くほど。前後ともスタビライザーを装備したサスペンションは、幅が狭く背の高い車体なのに不安を感じさせない足取りでコーナーをこなす。『ムーヴ』のマイナーチェンジに続いて、基本性能をおろそかにせず開発したことは明白だ。

軽自動車は税金が安いから売れる。税金が引き上げられたら販売はガタ落ちになるという人もいる。でもタントは仮に税金が上がってもそこそこ売れるだろう。軽自動車を選ぶという行為はいまやネガではないし、コンパクトなサイズと燃費の良さはむしろアドバンテージである。しかも挑戦的な設計であらゆる性能を高い次元に引き上げつつ、価格は自動ブレーキ付きの中間グレードで135万円なのだ。

実は開発エンジニアも、税金が上がっても売れるクルマを目指したと語っていた。子育てママをターゲットとするコンセプトは不変だが、新型タントはそこに留まらず、この国でクルマに乗る多くの人が満足できるレベルにまで到達点を引き上げている。はるかに大きな世界を見据えて作られているのだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

《森口将之》

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