【スバル BRZ tS】ダートレースからのヒント…あたため続けたドライブシャフトの大径化

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スバル BRZ tS
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  • (左から)スバル BRZ tS 開発者の毛利豊彦氏、森宏志氏、渋谷真氏
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スバルテクニカインターナショナル(STI)は、コンプリートカー『BRZ tS』を限定500台で発売している。

同車は、ベースモデルであるBRZのハンドリングをさらに向上させるべく、専用チューニングを実施。ブレンボ製ベンチレーテッドディスクブレーキや18インチアルミホイール、STI製フロントアンダースポイラーも採用し、足回りの強化につとめた。

商品開発部マーケティンググループの森宏志氏は「スポーツモデルにおいては"S"シリーズが頂点となるが、長いモデルライフの中で、まずパワーユニットはそのままに走行性能を引き上げた"tS"を世間にアピールしたいと考えました。今は、強靭でしなやかな走りの魅力を感じていただく段階」と話す。同氏は、富士重工業で4代目『レガシィ』のシャシーやサスペンション、2代目『インプレッサ』 等を手掛けた。2012年からはSTIで担当部長として開発を取りまとめている。

BRZ自体が、スバル初の水平対向エンジンを搭載したFRスポーツカーという独特の位置付けにあるため、特にコンペティターとして意識するモデルはないという。これまでのtSセオリーに沿った、フレシキブルタワーバーやドロースティグナーなど定番パーツによる開発手法に加え、今回はドライブシャフトの大径化という新しい試みも行った。

その発想は、ダートトライアル選手権の経験を持つ、商品開発部 車両実験グループ 渋谷真氏によるもの。「四駆でレースに参戦していましたが、コーナリングの入り口から容易にアクセルが踏めるような状態を考えていました。そうすれば運転も楽になり、タイム向上も望めるからです」。LSDの調整などで模索する中、シャフトの太さを前後で差別化する方法を思いついたという。「アクセルを踏んだ時、前は細い分トラクションが伝わりにくく、太い後ろにはぐっと伝わる。そうすればFRのような動きになるのではないかという安易な発想です」と渋谷氏は笑うが、これが車体の安定とタイム短縮の効果をもたらしたのだ。

いつかはこの方法を、市販車に織り込もうとあたためていた渋谷氏。量産車の部品は強度・耐久性をクリアした中で極力軽量を目指さなければならず、オーバークオリティになってしまうこともあり実現は難しい。しかし、tSなら後架装ができる。試作車は予想以上の性能を発揮した。

「まず、コーナリングでのハンドリングが向上しました。次にアクセルのツキがよくなっています。エンジンやミッションに変更はありませんが、ぐっと前に出る感触が増しました。さらに、駆動のオンオフからくる振動が減り、低速時でも快適性が保てるようになり、MT車のシフトも入りやすくなっているのです。これら駆動系のねじれが減ったことによる効能は、BRZ本来の魅力を引き出し、STIが作る車として大きな特色を打ち出しています」(渋谷氏)。

車体技術部の毛利豊彦氏は、「どの部品でも仕様を変えるのは難しいこと。たとえ4mmでもシャフトを太くするのは簡単ではありません。しかしこの効果を見て、やはりコストと手間をかけても実行すべきという考えにまとまりました」と語った。

《吉田 瑶子》

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