【中田徹の沸騰アジア】インド市場失速、金利高を背景に低迷長期化の懸念も

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インド、乗用車販売台数と伸び率
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  • タタ・サファリSTORME(デリーモーターショー12)
  • マルチスズキ・エルティガ(デリーモーターショー12)
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インド乗用車市場が2013年6月まで7か月連続で前年同月比マイナスとなった。経済情勢の悪化が顕在化しているものの、インフレ圧力を背景に高金利政策が続いており、個人消費などに打撃を与えている。景気悪化・インフレ・金利高に絡む構造的な悪循環は一朝一夕に解消されるものではなく、自動車販売低迷が長期化する可能性もある。

◆乗用車販売は7か月連続でマイナス

ユーティリティ車を含む乗用車の販売台数は2012年12月に前年同月比1.1%減となり、縮小局面に転じた。2013年2~3月にはそれぞれ16.7%減、13.0%減となった。インド最大の祭りのひとつでヒンドゥ教の正月とも言われるディワリの影響を受けて20.4%減となった2011年10月を除くと、2008年11月以降で初めて2桁減となった。4月以降は5~9%減で推移している。

需要低迷の要因については、景気悪化(2012年度のGDP成長率は10年ぶりの低水準)、燃料高、ローン金利の高止まり、消費意欲の低下、新車投入ペースが緩慢になっていること、などが挙げられる。また、リーマンショック直後の2008年秋~2009年においては物品税引き下げと利下げが迅速に行われ、自動車市場を押し上げたが、2012年までにこれらの景気刺激策は終了しており、最近の需要縮小につながっている。

金利高が元凶、市場停滞が1年続く可能性

インド経済停滞の理由には、1:輸出低迷が長引いていること(欧州債務危機が一因)、2:インドからの資金流出(米国FRBが量的緩和策第3弾の終了を示唆したことが一因)、3:インドからの資金流出が歴史的なルピー安を引き起こしていること(輸入物価の上昇)、などが挙げられる。経済状況が悪化しているにも関わらず十分な景気対策が講じられていないが、この背景にはインフレ問題が存在する。

効率的でないとされる経済構造を背景に、インフレ圧力は強く、金利高を招いている。そして企業投資や個人消費の先行きには不透明感が濃い。こうした構造問題の解消に向けた経済改革は遅々としており、自動車市場の回復には時間がかかるかもしれない。

インド政府などが自動車市場支援策の導入を検討している一方で、「今後1年程度は自動車産業の成長が停滞する」といった見方も出始めている。GMを含む一部の自動車メーカーや部品企業の間では、投資計画の延期や見直しを始める動きが顕在化。インド自動車市場の潜在的な成長性が萎んだわけではないが、期待されていた時期より大台達成が遅れる可能性を否定できない。

成長機会はある

乗用車市場全体としては厳しい状況が続く可能性があるものの、投資が急がれる分野もある。2013年3月期の乗用車販売台数のうち、ガソリン車は前年度比17%減となったが、ディーゼル車は23%増と好調。軽油価格の上昇を受けて直近ではガソリン車に需要が回帰しているようだが、依然としてディーゼルエンジンや同部品の生産能力は足りていない。また、急激なルピー安(対米ドル)により輸入材・部品の調達コストが上昇しており、現地化促進による為替リスクの低減も急務である。一本調子の拡大局面が終わるなか、成長機会の見極めが一層重要になっている。

《中田徹》

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