最近のMINIは「JCW(ジョン・クーパー・ワークス)」をスポーツイメージの象徴となるモデルとして各ボディに設定している。爽快なオープンエアを楽しむためのモデルであるコンバーチブルにも設定されるが、ミニの中でもJCWが最も似合わないのがコンバーチブルかも知れない。
現在では、JCWにも6速AT車が設定されていて、コンバーチブルを買うユーザーの大半がAT車を選ぶと思う。だとしてもコンバーチブルにパワフルなエンジンのJCWという組み合わせは最適とはいえない。
オープンエアを楽しみたいユーザーはほかのエンジンを選ぶだろうし、思い切りアクセルを開いて走りを楽しもうとするユーザーはほかのボディを選ぶだろうからだ。選択肢としてあっても良いが、特にお勧めできるモデルではない。
ミニのコンバーチブルは、クローズドのときには斜め後方の視界が悪く、オープンにしたときも畳んだ幌(ほろ)のために真っすぐ後ろも見えにくくなるなどのデメリットもある。でもオープンにしたときの爽快感はそうしたデメリットを補って余りあるものだ。
JCWの搭載エンジンは直列4気筒1.6リットルの直噴ターボ仕様で、とても気持ち良く吹き上がるのと同時に155kW/260Nmという余裕十分のパワー&トルクを発生する。
オープンボディのコンバーチブルは剛性を確保するための補強が行われて車両重量が重くなり、ハッチバックに比べると90kgも重い1290kgとなるが、その重さを苦にしないパワフルかつ豪快な走りのフィールはJCWならではのものだ。
低い着座位置が生む、ミニならではのゴーカート感覚の走りもスポーティな雰囲気を高めるものとなる。
ミニは全般に足回りが硬いが、コンバーチブルもJCWでは極端に硬くなる。クーバーSでも相当に硬めの乗り味だったが、JCWはそれ以上に硬いのだ。サーキットやワインディングなどで走りを楽しむときにはこの硬さでも良いが、ふだんの街中での走りなどでは、ちょっと硬すぎる感じである。
コンバーチブルJCWの価格は440万円で、かなり高めの設定だ。クーパーSなら355万円なので、100万円以上も高いのだ。この価格差は大きい。コンバーチブルというボディタイプを考えたら、現実的な選択はJCWではなくクーパーSだと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。