アッヴィ合同会社とIBD患者団体などは、今後、5月19日を、大腸や小腸などに原因不明の炎症を起こす難治性の炎症性腸疾患(IBD)を理解する日に制定すると発表した。欧州のIBD患者会が初めて世界会議を行なった1990年5月19日にまつわるという。
炎症性腸疾患(IBD=Inflammatory Bowel Disease)は、クローン病と潰瘍性大腸炎の2つの疾患からなり、わが国では、クローン病の患者が約3.6万人、潰瘍性大腸炎の患者が約14.2万人といわれている(平成23年度厚生労働省報告)。
IBDの認知促進などを目的としたイベント(19日)で、大船中央病院特別顧問・上野文昭氏は「クローン病は下痢や腹痛、貧血などが、潰瘍性大腸炎は粘血便や下痢が症例として多くみられる。発症は10~20代が最も多く、血便、粘液便、下痢や腹痛などが良くなったり(寛解期)、悪くなったり(活動期)を慢性的に繰り返す」と解説していた。
「急に症状がおとずれるので、クルマや電車も乗れない日もある」というこのIBD。厚生労働省から特定疾患(難病)に指定されている。患者は、常に原因不明の下痢、腹痛などの症状に悩まされ、さらにIBDに対する周囲の無理解や誤解などによって、仕事や教育、人間関係などに支障をきたすまでに至るという。
IBD患者でNPO法人IBDネットワーク副理事長の中山泰男氏は、「仕事がちゃんとつけずに正社員3回、20以上のアルバイトを繰り返し、4回の手術を経験したが、昨年も3回入院するという状況」という。
上野氏は、こうした難病・IBDに対して「できるだけ早くよい状態に戻すこと、悪い状態にさせない(寛解維持)、合併症を予防する」などのポイントをあげている。
「常に腸の炎症が起こっていない状況を維持することが大事。不安な人はIBD研究に取り組む若い医師に診てもらうことをすすめる。これまでは、5-ASA製剤やステロイド、手術などがおもだった治療とされたが、生物学的製剤、経腸栄養剤、血球成分除去療法、免疫調節薬なども進化している」と上野氏。
同理事長の萩原英司氏は、「治療の選択肢が増えたので、毎日の生活や悩みについて医師と相談しながら寛解を維持してほしい」と話していた。
「さらに、クローン病の疑いありと診断されたが症状が出なくなったため、確定診断には至らなかったという」タレントの山田まりやさんもゲスト登壇。「2003年の舞台で嘔吐や下痢、発熱、貧血などが症状で出た。ひとたび出るともだえ苦しむという感じ」と当時を振り返っていた。
アッヴィ合同会社やIBD患者団体は、難治性の炎症性腸疾患(IBD)の正しい理解、早期受診と治療による寛解の維持、症状に対する偏見・誤解の是正などを訴えている。