JAXA、銀河系で高エネルギー粒子が作り出される定説を覆す結果

宇宙 科学
土星の磁気圏に生じた衝撃波を観測する土星探査機カッシーニ(想像図)。
  • 土星の磁気圏に生じた衝撃波を観測する土星探査機カッシーニ(想像図)。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、土星探査機「カッシーニ」のデータ解析から、銀河系でどのように高エネルギー粒子が作り出されているのかという問題に関する新しい知見が得られたと発表した。

2007年2月3日、土星を周回するカッシーニは、太陽風とよばれる、太陽からの粒子の流れが、土星の磁気圏に衝突することによって生じた強い衝撃波を詳細に観測することに成功した。強い衝撃波が発生した際、カッシーニによる「その場」観測が実施され、はじめて実証に基づいて強い衝撃波が粒子を加速させる現場をとらえることができた。

観測結果によると、太陽系における観測史上最高のエネルギーを持つ電子(相対論的電子)が、強い衝撃波に伴って観測された。しかし、その時の磁場の状態は、磁力線と流れの向きがほぼ平行で、これまでは電子加速を起こさない条件だと考えられてきたものだった。

太陽系での過去の観測結果によると、電子加速は磁力線と流れの向きがほぼ平行な場合には起きないとされていたが、今回の条件は、その常識を覆すものとなった。これまでの観測対象が弱い衝撃波だったの対し、今回の事例は強い衝撃波であることが、この相違の原因だと考えられるとしている。

詳細を知ることのできない超新星残骸における磁場の状態は、論争の的となるケースが多いが、その意味でも今回の成果は大きな意味を持つ。強い衝撃波によって発生する相対論的電子加速の条件が実証に基づいて把握され、従来考えられていたものとは逆だと分かったためだ。

今回の研究成果は、2月17日発行の英科学誌「ネイチャー・フィジックス」オンライン版に掲載された。研究を主導したのはJAXAインターナショナルトップヤングフェローとJAXA宇宙科学研究所の研究者。

NASA、ESA、イタリア宇宙機関の共同計画である土星探査機カッシーニは、1997年10月15日に打ち上げられ、2004年に土星を周回しての観測を開始、現在も観測継続中。

《レスポンス編集部》

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