大気圏内での微小重力体験を可能に 欧州宇宙機関

宇宙 科学
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欧州宇宙機関(ESA)は、ゼロ-G航空機を使ったパラボリック・フライトによって約22秒間の微小重力状態を、地球の大気圏内でシミュレートしている。

バラボリック・フライトとは、ノーマルな旅客機(ボーイング)をほとんど改造することなく、高度約6000メートルの高さで急上昇と急降下を31回繰り返し、機内の科学者や被験者は限られた短い時間、微小重力下での様々な影響を調査することができるというもの。

今回のフライトにはドイツからの2チームと、フランスの1チームが参加し、それぞれ科学実験を行った。

ドイツのスポーツサイエンスチームは、微小重力が与える脳の働きへの影響を調べ、体内の血液が下側にではなく、頭の方に向かって移動することで、脳の働きにネガティブな影響があるかどうかを、特殊な装置を使って実験した。

重力の小さな状態で簡単な計算などができるかどうかといった実験を繰り返し、結果的に重力よりもむしろ慣れない環境によるストレスの影響の方が大きいのではないかという仮説に達した。

ミュンヘンから参加したチームは被験者の体の各所にセンサーを取り付け、微小重力の中で人間がどういったリラックスしたポーズを取るのかを実験した。そして得られたデータを特別なソフトウェアで処理し、今後は人体の3Dモデルを作成する。

フランスから参加した科学者のチームは、微小重力下での沸騰した液体のバブルの挙動を調査しようとしたが、チューブの連結に問題があり、液体が漏れて空気中に蒸発してしまったため、実験を継続することが不可能になってしまった。彼等は後日、さらに2回の同じフライトで実験をすることができるが、6か月に渡る準備にも関わらず、実験時間の3分の1を無駄にしたことを非常に悔やんだという。

ゼロ-G航空機を操縦するパイロット達はそれぞれに異なった役割を持ち、一人は機首の角度(約40度)の上げ下げ(ピッチ)を担当し、もう一人の操縦士は機体をロールさせないように水平に保つ役割を果たす。

パラボリック・フライトを行って重力をゼロにすることはできないが、月や火星とほとんど同様の微小重力環境を作り出すことが可能である。

《河村兵衛》

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