海外でカーナビを使うと、分岐点ガイドをはじめとしたルートガイドは日本では考えられないほど機能がシンプルであることが多い。そんな状況を改善してよりわかりやすいカーナビへと発展させようと活動を続けているのがゼンリンヨーロッパだ。その活動を現地で追ってみた。
同社はカーナビ用地図データの提供元として知られるゼンリンが1995年に駐在事務所を開設し、1997年に現地法人を設立、以来、主として現地カーナビメーカーに対するアドイン地図コンテンツを提供し続けてきている。また、ゼンリン本社が開発した3D動画で分岐点をガイドするGCM(Guidable City Model/ガイダブル・シティ・モデル)を手掛けた実績も持つ。この実績で得たノウハウを基に、より高精度で見やすさを追求した分岐点ガイドを展開しているのだ。
このうち、ゼンリンヨーロッパが手掛けているのは主としてアウトバーンなど高速道路での分岐点ガイドとなる。一般道でのターンバイターンデータについては、すでに世界的な地図メーカーであるNokia(旧NAVTEQ)やTomTom(旧テレアトラス)が整備済みで、単なる拡大図では入り込む余地がない。そこでゼンリンヨーロッパは高速道路を中心としたガイドにターゲットを絞ったというわけだ。
高速道路での分岐点ガイドは、車線と方面ガイドを組み合わせた日本ではごく当たり前の表示方法だ。しかし、欧州では高速道路となると単に進むべき道路名を表示するのがせいぜいで、分岐点の道路や車線数までをガイドする例は少ない。ゼンリンヨーロッパはGCMで培った技術の下、より高精度で見やすい分岐点ガイドを提供しているというわけだ。また、データはすべてPNG形式を採用する。BMPを採用する例もあるが、透過表示ができることを優先してPNG形式を採用しているのだという。
現在、この分岐点ガイドは欧州の高速道路をほぼ網羅し、その数約1万6000箇所。カバー範囲は20カ国にも及ぶ。アウトバーンであればすべての分岐点情報をカバーし、ドイツやフランスなど主要7カ国では高速道路からの出口案内も実現している。また、採用メーカーは、トヨタや日産など日本自動車メーカーをはじめ、日産の関係もあるルノーにも供給。さらに一昨年からは韓国のヒュンダイや起亜自動車にも提供を開始している。
制作現場を覗くと、想像以上にシンプルなことに拍子抜けしてしまった。入力用パソコンが向かい合わせに並び、それぞれが同じコンテンツの制作に臨んでいるのみだ。これだけを見るととても地図データを制作している現場とは思えない。パソコンの高性能化が進み、これで十分な能力が発揮できているのだという。
ただ、データの間違いは命取りともなるわけで、そのために工事中、もしくは、工事が完了した分岐箇所は年に一度、それ以外のジャンクションに対しても二年に一度は現地調査を実施。さらに入力は同じコンテンツを二人で入力し、仮に差異があった場合は直ちに修正できる二重チェックシステムを採用している。今後の展開としては、すでに、21ヵ国目となるマイカー需要が旺盛なロシアの整備も開始している。トルコ、クロアチアやギリシャなど、紛争地域を除くエリアにも範囲を広げる計画だという。